Celtic Dragon 第9話 古代竜 エリーニ♀(14)平和 世間知らずで元気で無邪気。 田舎のレイドル地方から冒険者になりたくて首都に出てきた。 レイシオ♀(19)戦士 気が強いが、見栄っ張りな一面もある剣士見習い。 エリーニのお姉さん的な存在。 フートルース♂(35)気まま 自由気ままに生きている冒険者。 なんだかんだで世話焼きな性格。 ディナミス♂(38)力 力を至上のものと考える国王。 自らも剣を握り、前線で戦う。 サーヴレット♂(27)仕える 真面目で紳士な宮廷魔術師。 炎の魔法と得意とし、王国の魔法兵団を始め軍師として王国兵団を指揮している。 メロディア♀(24)旋律 寡黙で無感情。 魔族の吟遊召喚士。 タナトス♂(38)死 言葉巧みな死神。 魔物のなかでも上位妖魔に位置する。 フートルース:な……なんだ……? レイシオ:り……竜……!? タナトス:ほう……これはまた珍しい。      古代竜族、もう絶滅したものと思っていたがな。 エリーニ:……ごめん。 レイシオ:えっ? エリーニ? エリーニ:ごめんね、レイシオ、フートルースさん、あたし、ずっと嘘ついてたんだ。      これが本当のあたし……。       タナトス:この声……さっきの娘の正体がこの古代竜だというのか? フートルース:へっ……魔物の旋律が聞こえたり、妙な力を持っているとは思ってたが……。        まさか、これがお前の本当の姿だったなんてな……。 エリーニ:あたしは……竜族のお父さんと、人間のお母さんの間に産まれた竜族の人間……。      だから、魔物の気持ちも、人間の気持ちも分かるんだ。       ディナミス:ばかな……人間と魔物の間に子が産まれるなど……。 サーヴレット:聞いたことがあります……遥か昔、太古の時代、人々は魔法の力で様々な種族との間で子を成したと……。 レイシオ:後に、その魔法は禁忌の術とされ、封印された……だったよね、兄さん。 サーヴレット:ああ、そもそも反対の本能を持つ種族だ、産まれる子供も自我が崩壊する者が多かったという。 フートルース:そりゃあ封印されても仕方ねぇな。        もっとも、エリーニはずいぶん人間寄りみたいだがな。         タナトス:人間寄り?      この娘の姿を見てもそう言えるのか?      立派な魔物ではないか、この堂々たる竜の姿は。       レイシオ:見た目だけで判断しないで!      エリーニは明るくて元気な……ちゃんとした人間なんだから! タナトス:ほう、これでもまだそんなことが言っていられるのか? メロディア:……狂いなさい、暴れなさい、理性など振り払い、本能の赴くままに。       全てを破壊し、闇に葬り去れ。        SE:バイオリン エリーニ:うっ……いやっ、いやあああ! フートルース:? エリーニの奴、どうしたってんだ? サーヴレット:この詩は……魔物を扇動する詩!        奴は上級妖魔、指揮官か……!?         フートルース:どういうこったよ? レイシオ:この詩には邪悪な魔力が込められている。      闇の力が宿る者、つまり魔物の理性を崩壊させ、破壊へと導く詩……。      エリーニが、魔物になっちゃう……!       メロディア:荒廃した大地に響くは滅亡の音、空に降りるは深淵の帳(とばり)。       欲望のままに全てを焼き尽くせ、己のために全てを解き放て。        エリーニ:う……うっ……うああああ! SE:炎 フートルース:っ!? おい、エリーニ!? レイシオ:危ないっ! SE:バリア フートルース:す、すまねぇ……。 ディナミス:我を失ったか、やむを得まい。 SE:剣 レイシオ:ちょ、ちょっと!      レイシオに剣を向けるなんて!       ディナミス:あの娘は我々を攻撃してきたのだぞ。       やらなければ、こちらがやられる!        サーヴレット:陛下、お供します!        お下がりください、私が先手を打ちます!         レイシオ:ちょっと、兄さんまで! サーヴレット:凍てつく大地に吹く風よ、我が前にその冷気を呼び起こせ!        レイル・ブリザード!         レイシオ:……っ!      ファイア・ウォール!       SE:風と火 サーヴレット:レイシオ!? 何をする! レイシオ:やめて、兄さん!      エリーニはあたし達の仲間なんだから!       エリーニ:(ゴォオオオオ!) SE:翼の音、金属音 ディナミス:ぐうっ……! レイシオ:うあああっ! タナトス:ふはははは、これは愉快。      人間というものはなんと愚かな生き物なのだ。 ディナミス:くそっ……!       おおおおお!        SE:斬撃 エリーニ:(グォオオオオ!) フートルース:おい、ディナミス! ディナミス:貴様も剣をとれ!       我々の目の前にいるのは魔物だ! フートルース:ちっ、分かってねぇな、俺達が倒すべきものはエリーニじゃない、この死神野郎共じゃねぇか! ディナミス:ならば貴様はこの竜に背を向けて戦えと言うのか! フートルース:ああ、その通りだ!        エリーニは俺らの敵じゃねぇ!        いくぞ、レイシオ!         レイシオ:えっ? うん! タナトス:ふっ、どこまでも愚かな人間共よ。      生身の体で我に敵うとでも思っているのか。       レイシオ:天高く輝くは無限の光、雲より差すは闇を払う光線。      闇に巣食う邪悪な魂を浄化せよ!      ホーリー・レイ!       SE:魔法 レイシオ:ぬっ……この娘、小ざかしい……! サーヴレット:レイシオの奴、神聖魔法まで……。 フートルース:いくぜぇ!        おらああああ!         SE:斬撃 メロディア:……くっ! フートルース:おらおら、人間の力をなめるなよ! メロディア:……小癪なっ……! エリーニ:……うっ、うう……。 レイシオ:エリーニ!? エリーニ:戦いは……やめて……あたしも……頑張るから! ディナミス:自我が戻ったというのか……? タナトス:ふん、自我をコントロールもできん下級魔族か。      メロディア、続けろ。       メロディア:……地底よりも深く、暗く、闇に落ちる魂よ、我らと共に絶望の道を歩まん。 エリーニ:うぅぅぅ……頭が……! フートルース:させるかよぉ! タナトス:それは我らが台詞だ!      闇に呑まれ恐怖に慄いて(おののいて)死ぬがいい!      ダークネス・フィア!       フートルース:ちっ! タナトス:ふっはははは、この闇を越えて近づく勇気が貴様にあるか? レイシオ:気をつけて!      その闇に呑まれたら命を蝕まれる(むしばまれる)わ!       フートルース:分ぁってるよ! くそっ! エリーニ:……あたしは……負けない! SE:雄たけび メロディア:っう!? くぅっ! タナトス:なんだと!? エリーニ:本当に、人間と魔物は戦いをやめることはできないの……? タナトス:言ったであろう、魔物は破壊と殺戮が本能だ、人間に分かろうはずもない! ディナミス:人間は創造し、繁栄することが生きることだ、魔物の本能など理解できん! エリーニ:どうしても……ダメなんだ……。 メロディア:奏でるは死の旋律、破壊は滅亡への序章、全てを闇で覆いつくせ、全てを破壊し尽くせ……! エリーニ:人間と魔物が争うのなら……どうしても一緒に生きていけないのなら……触れなければいい! メロディア:扇動が、効かない……!? エリーニ:お互いが歩み寄れないのなら、お互いの世界で生きていけばいい! SE:地響き フートルース:な、何だ!? レイシオ:地割れ!? タナトス:馬鹿な、これほどまでの力が……っ!? エリーニ:あたしが……二つの世界の境界になる……っ!