Celtic Dragon 第7話 自由 エリーニ♀(14)平和 世間知らずで元気で無邪気。 田舎のレイドル地方から冒険者になりたくて首都に出てきた。 レイシオ♀(19)戦士 気が強いが、見栄っ張りな一面もある剣士見習い。 エリーニのお姉さん的な存在。 フートルース♂(35)気まま 自由気ままに生きている冒険者。 なんだかんだで世話焼きな性格。 ディナミス♂(38)力 力を至上のものと考える国王。 自らも剣を握り、前線で戦う。 サーヴレット♂(27)仕える 真面目で紳士な宮廷魔術師。 炎の魔法と得意とし、王国の魔法兵団を始め軍師として王国兵団を指揮している。 エリーニ:……う、うーん……。      ……あれっ?       レイシオ:おはよ、やっと起きたわね エリーニ:あっ、レイシオ……あれっ? ここは? レイシオ:昨日の戦いがあった場所の近くの村よ エリーニ:昨日の戦い……あっ、そうだ! あの大きな魔物はどうなったの!? レイシオ:無事に倒したわよ。      エリーニったら、戦場なのに急に寝ちゃうんだもん、びっくりしたわ。       エリーニ:なんか、急に眠たくなる音楽が聞こえてきて……。 レイシオ:また音楽? そんなもの聞こえなかったわよ?      ま、それはともかく、あのおっさんがまさか……。       フートルース:よう、やっと目が覚めたか。 エリーニ:あっ、フートルースさん、おはようございます! フートルース:へっ、相変わらず元気だけはいいな。        怪我もなかったみてぇでよかったぜ。        急に寝ちまって心配かけやがって。 ディナミス:失礼する。 フートルース:おっ、国王陛下直々のおでましかぁ? エリーニ:国王!? サーヴレット:……。 レイシオ:あっ、兄さん……。 エリーニ:あああ、そうだ、たくさん聞きたいことがあったんだった!      ねぇねぇ、聞いていい!?       フートルース:おいおい、とりあえず落ち着けよ。       ディナミス:構わん。       それよりも先に礼を言わせてくれ。 エリーニ:礼? ディナミス:ああ、昨日のテラーズとの戦い、お前達に助けられた。       改めて礼を言う。       あの場面でテラーズが召喚されるのは想定外だった。       レイシオとフートルースの力がなければ、撤退を余儀なくさせられるところだった。        レイシオ:いえ、お役に立てたこと、光栄に思います。      あの……私がディナミス様に進言するのも失礼に値するとは思いますが……エリーニにもお礼を言ってあげてください。      エリーニが助けに行こう、って言ってくれなかったら、私達はあの場所にはいませんでした。       ディナミス:……そうか、二人の力を戦地へと向かわせてくれた事、感謝する。        エリーニ:えっ? あっ、はいっ! フートルース:なぁに、報酬さえはずんでくれりゃあ問題ねぇよ。 サーヴレット:冒険者組合には連絡をしておいた、心配はするな。 エリーニ:あーっ、そうだよ、この人、レイシオのお兄さんなの? レイシオ:えっ?      ……そ、そうよ……。 サーヴレット:どこぞの家出娘が……私は認めたくはないがな。 ディナミス:お前の兄弟が家出したとの話は耳にしていた。 サーヴレット:ご、ご存知でしたか……。 ディナミス:それはそうだ、国内きっての宮廷魔術師マギア家の娘が家出したのだ。       王国兵団の戦力低下に繋がりかねん。        エリーニ:レイシオ、家出しちゃったの? レイシオ:……そうよ、あたしは宮廷魔術師マギア家の第5子、レイシオ・マギア。      ……家出したことに後悔なんてしていないわ。       フートルース:なんで家出なんてしちまったんだよ。        マギア家の肩書きがありゃ、生活も地位も安泰だったろうによ。         レイシオ:それが嫌だったの。      小さい頃から魔法を教え込まれて、将来のことも勝手に決められて……。      あたしに拒否権なんてなかった……。      だんだん、魔法が嫌いになった……だから、剣を持とうと思った。      外の世界に出て、自由な生活が送りたかった。       フートルース:通りで。        妙に礼儀正しかったり、剣士を名乗っているクセに剣の扱いが下手だったりした訳だ。         レイシオ:う、うるさいわね……。       サーヴレット:私にしてみれば悔しい話だが、私ではなくレイシオの方が魔法の才能があったのだ。        それもあってだろう、レイシオは他の兄弟以上に期待され、教育させられていた。        ……皮肉にも、それを見て育った私は負けまいと必死に親の敷いたレールを歩んだ。         フートルース:それが今のお前の地位ってわけか。        ……お前はそれで満足しているのか?         サーヴレット:ああ、満足している。        妹……レイシオよりも魔法の才能がなかったとはいえ、陛下は私を目に止めて下さった。        今では陛下の下で魔法兵団を率いていることを誇りに思う。         ディナミス:サーヴレットは努力家であり、炎の魔法という大きな力を持っている。       なにより、マギア家の独特のしきたり、軍略の知識も兼ね備えている。       マギア家の者は代々、指揮官として国へ仕える者が多かったからな。       サーヴレットは今では国に欠かせない軍師だ。 レイシオ:あたしは……嫌だった……。      しきたりも、才能も全部捨てて、もっと自由に生きたかった……。 フートルース:自由に……ねぇ……。 ディナミス:まさにお前と同じではないか。 エリーニ:えっ? ディナミス:この男、フートルースは王位継承権を持っていた。       なのに、国を出て自ら継承権を放棄した。 レイシオ:はぁ? おっさんが? フートルース:昔の話だ。 ディナミス:我が王国は代々、国王の座に世襲制がない。       力ある者が国王となる。       もう5年も前になるか、フートルースがまだ国の将軍として仕えていた頃だ。       先の国王は、私とフートルースのどちらかに王位を継承しようとしたらしい。 レイシオ:おっさんが国王……うぇぇ……。 フートルース:うるせぇよ。 ディナミス:フートルースは王宮でにわかに王位継承権の噂が流れ出すと、すぐに国を出た。       王位継承の儀すらも億劫だったのであろう。       国王にならずとも、残って重役に就けばよかったものの。       私はお前の力は認めていたのだぞ。 フートルース:へっ、堅苦しいことは性に合わねぇよ。        ま、そう考えると俺もレイシオと同じだわな。         レイシオ:おっさんが王様……。 フートルース:しつけぇよ。         エリーニ:……音が、する……。 ディナミス:なんだ? フートルース:おいおい、またかよ。 エリーニ:こっち! 行こう! レイシオ:あっ、ちょっと、エリーニ! フートルース:ったく、お前らはよー! ディナミス:……お前は、今の生活に満足しているのか? フートルース:じゃなきゃ、とっくに国に戻ってのうのうと生活してるだろうよ。 ディナミス:ふっ、そうだな。