Celtic Dragon 第2話 寂れた街 エリーニ♀(14)平和 世間知らずで元気で無邪気。 田舎のレイドル地方から冒険者になりたくて首都に出てきた。 レイシオ♀(19)戦士 気が強いが、見栄っ張りな一面もある剣士見習い。 エリーニのお姉さん的な存在。 フートルース♂(35)気まま 自由気ままに生きている冒険者。 なんだかんだで世話焼きな性格。 レイシオ:静かな……ところですね。 フートルース:首都からちょいと外れたらこれだ。        どれだけ首都が繁栄しているかってのがよく分かるな。         エリーニ:なんだろう、この感じ……あたしの村にちょっと似てるかも。 フートルース:ん? ああ、お前、レイドル地方から出てきたんだったっけか。 エリーニ:はいっ、そうです。 レイシオ:レイドル地方? なんでまたそんな遠くから出てきたの?         エリーニ:大きな町に行って、冒険してみたくって!      あっ、でも、自分の村が嫌いなわけじゃないですよ。       エリーニ:ふ〜ん、都会に憧れて、かあ。 フートルース:そういうお前はなんで冒険者の仕事を請けに来たんだ? レイシオ:え? あ、あたしですか? フートルース:そうよ、冒険者の格好をして毎日組合の前をうろうろしやがって。 レイシオ:あ〜、え〜っとぉ、あのぉ〜……。 エリーニ:どうしたんですか? レイシオさん? レイシオ:な、なな、なんでもないわよ! エリーニ:?? フートルース:ぷっ、いい加減、見栄張るのもやめちまいな。        どうせお前も冒険者になりたくて首都に出てきたクチだろ。         レイシオ:えっ? あっ……そ……そうです……。 フートルース:で、獲物は何よ。 レイシオ:獲物? フートルース:武器よ、武器。        冒険者ってくらいだから、当然、戦力になる武器は持ってるんだろう?         レイシオ:あっ、これです、片手剣。 フートルース:なんだよ、片手剣なのに盾は持ってねぇのか? レイシオ:た、盾は重くって……。 フートルース:そんなんで片手剣士が務まるかよ。        片手武器は盾を持ってなんぼだぜ。 レイシオ:こっ、これから持てるように頑張りますもん! フートルース:はぁ……まあ、いいけどよ。        で、お前の獲物はなんだ?         エリーニ:武器ですか? 持ってないです! フートルース:……はぁ? エリーニ:強いて言うなら、この腕でっ! フートルース:……はぁ……なんでこんなガキどもの子守をせにゃならんのよ……。 レイシオ:が、ガキじゃないですよ! フートルース:じゃあ、お前いくつよ。 レイシオ:じゅ、19ですけどっ……。 フートルース:十分ガキじゃねーか。 レイシオ:なっ、なによ、うるさいわね、オッサン! フートルース:あー、はいはい、お前なら俺のことをおっさんと呼ぶのを許してやろう。 エリーニ:おっさん、おっさん! フートルース:……はぁ……。        さっさと仕事終わらせて帰るぞ。         レイシオ:あっ、ま、待ってよー! フートルース:しっかし、静かだねぇ。        本当に魔物が暴れてんのかね。         レイシオ:そうだよね……そんなに広そうな村でもないし。 エリーニ:あっ、人がいるよ、聞いてみようか。 フートルース:あー、そうだな。        悪ぃ、ちょっと聞きてぇんだが。         村人:はい、なにか? フートルース:この村で魔物が暴れてるって情報を聞いたんだが。 村人:あぁ、それなら、ついさっき王国の兵団がきて騒ぎを鎮めてくれたよ。 フートルース:あー、先越されちまったか。 レイシオ:王国の兵団? 村人:ああ、治安部隊の兵団だよ。    魔物が暴れているのを国に通達したら討伐してくれるんだ。    あんたらは冒険者組合で仕事を請けてきたのかい?     エリーニ:はいっ、そうです! 村人:そうか、残念だったな、手柄を横取りされて。 エリーニ:えっ? フートルース:そういうこった。        悪かったな、時間とらせちまってよ。         村人:構わないよ、また魔物が襲ってきた時はよろしく頼むよ。 フートルース:おう、それじゃあな。 SE:足音 レイシオ:えっ? どういうこと? フートルース:どういうこともなにも、そのまんまだよ。        手柄を王国にとられちまった、てわけだ。 レイシオ:こ、こういう場合って……どうなるの? フートルース:このまま任務完了ってことで報告すりゃあ手間賃くらいはもらえるだろうよ。 エリーニ:えっ、これで仕事完了なの?      やったぁ、お疲れ様ぁ!       フートルース:ばぁか、王国の兵団に仕事を横取りされたんだよ。        ったく、稼ぎになりゃしねぇ。         レイシオ:これって、あたし達が魔物を倒したって報告しちゃえば……。 フートルース:組合の情報力を甘く見んなよ。        嘘の報告なんかすぐにバレちまうぜ。         レイシオ:そ、そっかぁ……。 フートルース:ま、初めての仕事でいきなりキツい仕事じゃなかったからよかったんじゃねぇか?        冒険者組合の仕事の流れはこんな感じだ。        後は報告をして終わり。        事実関係の調査やら書類やらは全部あっちで勝手にやってくれるしよ。 レイシオ:なるほどぉ……。 フートルース:それじゃあ、ここにはもう用はねぇな、とっとと帰るぞ。 レイシオ:うん。 エリーニ:……音が……する……。 フートルース:あん? エリーニ:こっちだよ! レイシオ:あっ、ちょっと、待ちなさいよ! フートルース:おい、置いてっちまうぞー。        ……あー、くそ、めんどくせぇな!