Celtic Dragon 第1話 冒険者組合 エリーニ♀(14)平和 世間知らずで元気で無邪気。 田舎のレイドル地方から冒険者になりたくて首都に出てきた。 レイシオ♀(19)戦士 気が強いが、見栄っ張りな一面もある剣士見習い。 エリーニのお姉さん的な存在。 フートルース♂(35)気まま 自由気ままに生きている冒険者。 なんだかんだで世話焼きな性格。 ディアヒル♀(37)管理 色気のある大人の女性。 冒険者組合の受付、管理を行っている。 エリーニ:うわあ! ここが首都かあ、おっきいなあ! 市場の人:今日はポーションが安いよ〜! 町の人:あぁ、そういえばこの前のダンジョンでポーション全部使っちまってたな。 市場の人:よっ、旦那、このロングソードなんていかがですかい? 町の人:ん? おいオヤジぃ、これ刃こぼれしてるじゃねーか。 市場の人:炎の初級魔術書、先着10名様特価セールだよー! 町の人:誰かこのバトルアックス買ってくれねぇかな〜。 町の人:おっ、あんた僧侶かい? ちょっとパーティ組んでくれねぇか? エリーニ:すごい賑わってる!      おじいちゃんが言ってた通りだあ!   SE:肩がぶつかる音 エリーニ:うわっ、と。 フートルース:おい、ちゃんと気をつけて歩けよな。 エリーニ:あ……す、すみません。 フートルース:見たところ、ここの人間じゃねぇみてぇだな。 エリーニ:あっ、はい! レイドル地方から来ました! フートルース:レイドル地方……ねぇ。        また、ずいぶんと田舎の方から来たんだな。 エリーニ:はい! ここ、すごくおおきな町でびっくりしてます! フートルース:ま、気をつけて観光するこったな。 エリーニ:はい! ありがとうございます!      あっ、観光じゃなくって、あたし、冒険者の仕事を請けに……。      ……行っちゃった。 店主:よう、譲ちゃん、あんた冒険者かい? エリーニ:え? あっ、はい! ここに来れば冒険者の仕事があるって聞いて! 店主:そうかそうか、んじゃあ、このキュアポーション買わないかい?    もし毒にやられちまっても、これを飲めば一発だぜ。 エリーニ:おおー。 店主:今なら一本20ゴールドのところ、二本で30ゴールドだ、どうだ? エリーニ:おおー! お買い得! 店主:毎度ありぃ! エリーニ:いきなり得しちゃったなあ!      えーっと、お財布〜。      ……あれ? お財布?       店主:なんだ、どうしたんだい、譲ちゃん。 エリーニ:あれ、あれええ!?      おじいちゃんにもらったお財布とお金がない!       店主:なんだよ、冷やかしかい? エリーニ:ち、違うよお! さっきまでちゃんとあったんだから! 店主:ゴールドがねぇと売るモンも売れねぇなぁ。    おっ、そこのあんた、ポーション買っていかないかい?     エリーニ:え、えぇ〜……ポーション〜……。 店主:ほれ、商売の邪魔だ、次はちゃんとゴールド持ってくんだぞ。 エリーニ:あ、あうぅうう……。 エリーニ:はぁ……どこに落としちゃったんだろ……あたしのお財布……。 レイシオ:あら? どうしたの、浮かない顔して。 エリーニ:あっ……えーっと……お財布落としちゃったんです……。 レイシオ:ふ〜ん、それは災難だったわねぇ。      いくら持ってたの?       エリーニ:えーとー……銅貨が2枚だったから……。 レイシオ:20ゴールド? どうってことないじゃない。 エリーニ:えぇ〜……でも、おじいちゃんにもらったお金……。 レイシオ:それくらい、ここで仕事を請ければすぐに溜まるわよ。 エリーニ:仕事……あっ、そうだ、あたし、ここに冒険者の仕事を探しに来たんだ! レイシオ:冒険者の仕事? 見えないわねぇ。      あんたなら、ウェイトレスとか道具屋の娘の方が合ってるんじゃない?       エリーニ:こう見えても、力には自信があるんですよお! レイシオ:ふ〜ん……ま、いいわ、ついでだからあたしが案内してあげる。 エリーニ:本当ですか!? レイシオ:ええ、ちょうど、あなたみたいな女の子のパーティが欲しかったところなの。 エリーニ:パーティ? レイシオ:そ、一緒に冒険者の仕事をする仲間よ。      あたしは剣士のレイシオ、よろしくね。       エリーニ:はいっ、あたし、エリーニっていいます!      よろしくお願いします!                   レイシオ:さて、着いたわ、ここが冒険者組合の本部よ。 エリーニ:ここで仕事を請けられるんですね! レイシオ:そうよ、行ってみる? エリーニ:はい! レイシオ:……お先にどうぞ。 エリーニ:え? あ、はい。      お邪魔しまーす!       ディアヒル:いらっしゃ〜い。       あら、やっと来たわね。     エリーニ:えっ? ディアヒル:ああ、あなたじゃないわよ。 レイシオ:え、いや、あの……。 フートルース:でよ〜、シケてんだよなぁ、中身たったの20ゴールドだぜぇ? ディアヒル:ほら、フートルース、あんたの負けよ。 フートルース:ああ? なんだぁ?        ……げっ!?         エリーニ:……? フートルース:なぁんで今日に限って来るかねぇ、くそっ。 ディアヒル:これでもう何敗目ぇ?       もうずいぶんとツケがたまってるわよ。 フートルース:あー、わーってるよ、払えばいいんだろ、払えば。 SE:硬貨の音 ディアヒル:……20ゴールド? なに、あんたふざけてんの? フートルース:残りはツケだ、畜生。 エリーニ:え、ええっとぉ……ここで仕事がもらえるって聞いたんですけどぉ……。 ディアヒル:あぁ、ごめんなさいね。       私はディアヒル、この冒険者組合で受付をやっているわ。 レイシオ:あの……もしかして……。 ディアヒル:ふふ、そうよ、あんたを賭けのだしにして悪かったわねぇ。       最近この建物の前をうろうろしていたでしょ。     レイシオ:み、見てたんですか……。 フートルース:冒険者の仕事を請けに来たはいいが、度胸がなくてここに入ってこれなかったんだろ。 レイシオ:う……うう〜……。 フートルース:後一日お前がここに来なかったら俺の勝ちだったのによぉ。 ディアヒル:女の勘ってやつよ。       それで、お譲ちゃん達は冒険者の仕事を請けに来たのね。     エリーニ:あっ、はいっ! レイシオ:は、はぃ……。 ディアヒル:それじゃ、この仕事をまかせましょうかね。       隣町のスレフ村で魔物が暴れているらしいの。     エリーニ:はいっ! レイシオ:う……いきなり魔物の討伐……。 フートルース:おいおい、初めての仕事にしてはキツくねぇか?        もっとあるだろうがよ、迷子の子猫を探すとか、隣の国まで買出しに行くとかよ。         ディアヒル:あんたも行くのよ。 フートルース:は? ディアヒル:借金しているのに仕事を選ばないでちょうだい。       いくらあんたが力ある冒険者だからって、働かなきゃ返せるものも返せないわよ。 フートルース:ちっ、足元見やがって。 ディアヒル:なーにが足元よ、そんなことは借金を返してから言いなさい。       それじゃ……あー、まだ名前も聞いてなかったわね。     エリーニ:あっ、はい、あたしはエリーニって言います。      よろしくお願いします! ディアヒル:ふふ、元気があっていいわね。 レイシオ:あ……あたしは、レイシオ……です……。 ディアヒル:エリーニちゃんとレイシオさんね。       そんなに心配しなくても大丈夫よ、このおっさん、フートルースもつけてあげるから。       こう見えても彼、冒険者としては一流だから。     フートルース:だーれがおっさんだよ、おめーより歳くってねぇぞ。 ディアヒル:それじゃ、スレフ村の魔物の討伐に3人パーティで登録するわね。       ここにサインしたら、正式に仕事受領よ。       結果報告なんかは、行く先々でこのおっさんが教えてくれると思うから。     フートルース:おいおい、登録料はいいのかよ。 ディアヒル:あんたの借金にツケといたわ。       言ったでしょ、借金返すまでは仕事も選べないわよ、って。     フートルース:こ、こいつ……。 SE:布を落とす音 エリーニ:ん? あれ?      あーっ! あたしのお財布!       フートルース:え? エリーニ:なんでフートルースさんが持ってるんですか!? フートルース:ぅえ? あ、ああ……さっき拾ってな。        お前のだったのか、返してやるよ。         エリーニ:うわあ、ありがとうございます! フートルース:あー……中身は抜き取られちまってたみてぇだ。        残念だったな、気をつけろよ。         エリーニ:えーっ!?      おじいちゃんにもらった20ゴールド……。       ディアヒル:ん? 20ゴールド? レイシオ:それって……。 フートルース:よーっし、それじゃあスレフ村に行ってさっさと仕事終わらせるか。        行くぞー、おめーらー。         SE:足音、ドアの音         エリーニ:あっ、待ってくださいよー! レイシオ:あっ、それじゃ、行ってきます。 ディアヒル:はーい、気をつけてね〜。 SE:足音、ドアの音 ディアヒル:……相変わらず手癖の悪い奴ね。       まあ、冒険者としての腕は一流だけど。       ……以前は国の兵士として仕えていたって話してたけど……本当なのかしら。