Format for Virus File No6. Format ■ リオール 20歳 ♂ 【強気系】 ■ ルージェ 16歳 ♀ 【無感情系】 ■ ベイーレ 19歳 ♀ 【強気系】 ■ トレッド 29歳 ♂ 【クール系】   (本国の病室) リオール「……ここ……は……」 トレッド「目が覚めたか。      ここは本国医療機関の病室だ」 リオール「トレッド……?      俺は……生きて……いる……?」       トレッド「ああ、これは夢ではない。      リオール、お前は助かったんだ」       リオール「……そうか……ルージェ……」 (隣の部屋から物を投げる音がする) ベイーレ「……なんで……なんで私を助けたのよ!」 リオール「ベイーレ?      ベイーレも助かったのか?」       トレッド「ああ、数時間前か、お前よりも先に目を覚ました。      目が覚めてからはずっとあの調子だ」       リオール「隣の部屋だな?」 (リオールとトレッド、ベイーレの病室に入る) リオール「入るぞ」 ベイーレ「……っ!? リオール!?」 リオール「あんたが騒がしくて寝ていられねえよ」 ベイーレ「リオール、なんで私も助けたのよ!」 リオール「助けたのは俺じゃない、ルージェだろ」 ベイーレ「そんなことはどうでもいいの!      なんで私みたいな犯罪者を生かしたのよ……。      私は生物兵器で何人もの研究者を殺した犯人なのよ!?」       リオール「……俺には分からん。      トレッド、なんでベイーレを助けたんだ?」       トレッド「なんでもなにもないだろう、人として当然のことをしたまでだ」 ベイーレ「本国の研究者には顎で使われ、手柄も横取りされ……。      私の復讐は終わった、私は死をもって罪を償おうと……!」       トレッド「ルージェには全ての会話が記録されていた。      お前の証言したボストレード島に派遣された研究者のこともな」       ベイーレ「……だから何なのよ……」 トレッド「ボストレード島の研究施設のマスターコンピュータのデータの検証も行った。      本国から派遣した研究者の行動は重罪に値する。      近いうちに、ボストレード島の研究者と関わりのあった者を裁判にかける」       ベイーレ「……っ!?」 トレッド「私が原告としてボストレード島研究機関を訴える。      今回の事件で上層部から提訴せよとの指示があった。      ベイーレ、お前には原告側の証人として立ってもらいたい」 リオール「なんでもかんでも上層部か……。      まあでも、これで全ての事実が白日の下にさらされる、ってわけか」 トレッド「そういうことだ」 ベイーレ「……でも、私も重罪を犯したのよ……」 リオール「その罪を、生きて証言台に立つことで償えということらしい」 ベイーレ「どうせその後には私の裁判も待っているわ。      極刑は確定よ!      それなら、もういっそここで……!」       リオール「あんたの復讐は、研究者を殺すことだったのか?      そして、自分が死んで全てを終わらせたかったのか?      ベイーレ、あんたは生きている。      あんたの手で、本国の研究者の隠蔽された事実を白日の下にさらすことができるんだ」 ベイーレ「…………」 リオール「この事実を伝えなければ、また同じことが繰り返されるかもしれないんだぞ」 トレッド「本国の研究者の裁判の後は、もちろんベイーレの裁判も行われる。      当然、生物兵器を用いた殺人罪だ」       リオール「おい……!」 トレッド「本国の法律では殺人罪は重罪だ、極刑は免れんだろうな。      しかし、ボストレード島研究部の裁判が終わるまではベイーレに死んでもらっては困る。      第三者である私の証言だけでは裁判に負けるかもしれん」 リオール「おい!      お前はいつもそうだ、人を捨て駒のように……!」 トレッド「だが、自分の命をかけて島の住民を守ろうとしたんだ。      情状酌量の余地はあるだろう」       ベイーレ「……情状酌量……ね……。      私が把握している限りでは、本国の研究者を14人殺したのよ。      事故ではなく、私が憎しみを持って故意的にね……!」       トレッド「見解によっては、本国の研究者をベイーレが処刑した、と見てもいいだろう」 ベイーレ「え……? 何を言って……」 トレッド「お前達は知らないのかもしれんが、ボストレード島は貴重な研究地域として他国も権利を握っている」       リオール「……何が言いたいんだ……?」       トレッド「ボストレード島は本国から見て治外法権に該当する地域だ。      本国の法律を適用させなくすることも可能だということだ」 リオール「強引なやり方だな……」 トレッド「本国の法律ではベイーレの罪は間違いなく死刑だ。      それを免れるための私からの提案だ」       ベイーレ「……いいわよ、そんな回りくどいことしなくても」 トレッド「……お前達二人を危険な目に遭わせたという私からの謝罪として受け取ってくれ。      私にできるのはこれくらいだ」       ベイーレ「…………」 トレッド「このまま命を絶って、ボストレード島で行われた臨床実験をなかったことにするか、      証言台に立って、全ての事実を白日の下にさらすか。      ……どうするかはお前次第だ。      裁判までは時間がある、よく考えておけ」 リオール「おい、トレッド……! 待てよ!」 (トレッド、ベイーレの病室から出て、リオールもそれに続けて出る) ベイーレM「……私の心は決まっていた……はずだった……。       私は何をした? 私は人を殺した……。       なぜ、殺した? 本国の研究者が憎かったから……。       なぜ、憎かった? 私の故郷をめちゃくちゃにしたから……。       ……また、同じことが繰り返されるかもしれない……?       生かされた私は、どうすればいい?」               (ベイーレの部屋を出た二人、廊下) リオール「おい、いくらなんでもあんな言い方はないだろ」 トレッド「私は事実を言っただけだ」 リオール「それでも……!      もっと言い方があるだろう?」       トレッド「ふん……悪いな、私の性格上、苦手なのだ……あのような状況は。      心配するな、ベイーレの命は私が保証する」 リオール「……ちっ、このカタブツが……」(少し嬉しそうに) トレッド「何と言われようと構わん。      とにかく、この件はまかせておけ。      ……上層部の命令とはいえ、お前には危険な目に遭わせてしまったからな、悪いようにはせん」       リオール「上層部の命令……ね……。      中間管理職も大変だな」       ベイーレ「トレッド!」 トレッド「何だ、気持ちは固まったか?」 ベイーレ「……ええ……。      どうせ死ぬのなら、本国の研究者に一泡ふかせて死んでやるわ」 トレッド「そうか、分かった。      裁判の手続きはこちらで行う、進展があれば随時連絡する」       リオール「へっ、さっきまで泣きそうだったベイーレとは大違いだな」 ベイーレ「女は割り切りいい生き物なのよ。      また恋愛相談でもあれば話を聞いてあげてもいいわよ」 トレッド「ちょうどいい、ベイーレも来るか?」 ベイーレ「どこに?」       トレッド「ここだ、入れ」 (トレッド、扉をあける) リオール「え……? ルージェ!?      お前、フォーマットされたはずじゃ……」       ルージェ「はい、私は一度フォーマットされました」 ベイーレ「ルージェに、また人工知能としてのオペレーションシステムをインストールしたの?」 トレッド「ああ、ボストレード島のマスターコンピュータのデータを全て回収後、再インストールを行った」 リオール「でも、一度フォーマットされたんだ、島での記憶……いや、記録は……」 トレッド「フォーマットにも様々な種類がある。      データを全てクリアして完全な白紙に戻す方法。      もう一つは、インデックスのみをクリアする方法だ」       リオール「俺は情報処理についてはそう知識がないから、あまり意味が分からないが……」 トレッド「本は、目次がなくても中身を読むことは可能だろう?」 リオール「まあ……そうだな」 トレッド「ルージェのフォーマットは後者のインデックスのみをクリアする方法を用いた。      つまり、フォーマット前のデータも残っている可能性があるということだ」       ベイーレ「オペレーションシステムごとフォーマットしたのに、復旧が可能なの?      島のマスターコンピュータの容量は並大抵じゃないわよ?」       トレッド「ルージェは最新鋭のコンピュータを搭載している。      前にも言ったが、ボストレード島のマスターコンピュータを凌ぐほどのな」       ベイーレ「全く……本国はどれだけの技術を隠してるのよ……」       トレッド「ましてや、ルージェは進化する人工知能、フォーマット前のデータも復旧できるかもしれんな」 リオール「あ……ああ……よく理解できないが……」 トレッド「論より証拠だな、ルージェ、リオールのことは覚えているか?」 ルージェ「リオール……損失したデータを照合します。      欠損データ24%、データの再インデックス化を行います」       リオール「……ルージェ、俺のことは……覚えているか?」 ルージェ「……リオール……マスター、また会えましたね」 リオール「ルージェ……!」 ルージェ「この感情は何なのですか?      喜びと、安心したような感情」       リオール「それは『懐かしい』という感情だよ」 ルージェ「懐か……しい……心地よい感情ですね」 トレッド「リオール、お前にルージェを預ける。      今後の調査にもアシスタントとして同行させ、ルージェの人工知能の研究を行ってくれ」       リオール「いいのか? ルージェはマスターコンピュータ並の性能を持っているんだろ?      俺みたいなヒラの調査員にこんな大きな仕事をまかせても」       トレッド「ルージェは様々な調査員に同行させたが、感情と自我を覚えたのはリオール、お前だけだ」 リオール「そうか……それなら、俺の好きなようにさせてもらう」 トレッド「ああ、研究・調査の成果を期待しているぞ」 リオール「了解、そういうことだ、ルージェ、これからもよろしくな」 ルージェ「はい、マスター!」