Format for Virus File No5. Eliminate ■ リオール 20歳 ♂ 【強気系】 ■ ルージェ 16歳 ♀ 【無感情系】 ■ ベイーレ 19歳 ♀ 【強気系】 ■ トレッド 29歳 ♂ 【クール系】         (隔離研究施設)       ルージェ「……本国からのデータ受信……データ展開、インストール開始……」 ベイーレ「……壊れて、しまえっ!」 ルージェ「う……」 ベイーレ「はぁ……はぁ……」 ルージェ「左肩損傷、外敵からの攻撃と認識」 ベイーレ「……しぶとい鉄クズね……!」 ルージェ「防衛モードON、武装クラスC、対象を肉弾攻撃開始」 (ルージェ、ベイーレに体当たりをする) ベイーレ「うっ、ぐっ!?」 ルージェ「対象転倒、束縛行動移行」 ベイーレ「くっ……!      なんで女型ロボットになんかに馬乗りされなきゃ……!」       ルージェ「……対象戦意喪失せず、対象破壊します」 ベイーレ「ひっ……!?」 ルージェ「…………」 ベイーレ「……ど、どうしたのよ……。      私を殺す気じゃなかったの……?」       ルージェ「対象をベイーレさんと確認……。      行動制御不能……」       ベイーレ「な、なによ……ここにきて情け?      ロボットらしくもないわね!」       ルージェ「私にも分かりません……なぜ行動を止めたのか……」 リオール「おい、そこまでにしておけ」 ベイーレ「リオール!?      あなたは眠ったはずじゃ……」       リオール「あんたに会う前に、ルージェに耐性物質の接種をしてもらった。      その中に睡眠薬耐性もあったんだろうな」 ベイーレ「じゃあ……あの時倒れたのは演技……?」 リオール「あんたの挙動があまりにも不自然だったからな。      もう抵抗する気もないだろう、ルージェ、離してやれ」       ベイーレ「……いいの?      今度は本気で殺そうとするかもしれないわよ」       リオール「その時はルージェにお前を殺させる。      マスターの命令は絶対だからな」       ベイーレ「……そうね、もう時間もない……全てを話すわ……」 ベイーレ「私はこの島に生まれ、ウィルス研究者としてこの施設で研究をしていた。      バイオハザードが発令されるよりもずっと前から、極秘の状態でボストレーウィルスは発見されていたわ。      地質調査施設はあなたも見たでしょう?」       リオール「ああ、地質調査施設にしては厳重すぎるくらいにウィルス対策されていたな」 ベイーレ「その頃は、まだボストレーウィルスは地表に拡がっていなかったのよ。      ボストレーウィルスが発見されると、すぐに本国からたくさんの研究者がこの島に送り込まれたわ。      でも、本国の研究者と元から島にいた研究者の私たちとはそりが合わなくてね」       リオール「時間がないんだろう?      核心を教えてくれ」 ベイーレ「……そうね……。      ボストレーウィルスの研究を開始して、派遣された研究者は何て言ったと思う?      島の住民で臨床試験を行う、ってね」       リオール「未確認のウィルスをいきなり人体で臨床試験だと?」 ベイーレ「本国への報告にやっきになっていたんでしょうね。      ボストレーウィルスが機密なのをいいことに、やりたい放題だったわ」       リオール「それをあんたは黙って見ていたのか?」 ベイーレ「島の研究者に発言権なんてないわ。      何かと言えば『本国からの通達だ』、『本国に逆らう気か』ってね。      でも、私は黙って見ているだけではなかった」       リオール「ボストレーウィルスを地表に出したというわけか」 ベイーレ「ええ、そうよ」 リオール「それで騒ぎを起こして、島の住民への臨床試験を中止させた、と。      だが、あんたの復讐は終わっていなかった」       ベイーレ「……そうよ。      表にはなっていないけど、臨床試験で大勢の人が死んだ。      全てボストレーウィルスのせいにされてね!」       リオール「ボストレーウィルス以外の臨床試験も行われていたのか?」 ベイーレ「そうよ、ボストレーウィルスが未確認のウィルスなのをいいことに、やつらはやりたい放題よ。      やり残した宿題を終わらせるように、危険な臨床試験を次々と……」       リオール「通りで……この島の研究成果が飛びぬけて良かったわけだ」 ベイーレ「そんなところまで見ていたのね」 リオール「仕事だからな。      だが、一つ腑に落ちないところがある。      ボストレーウィルスが無害であることは分かっていたのか?」       ベイーレ「……ついにバレちゃったか……。      ……ええ、分かっていたわ」 リオール「それならば、なぜお前を始めとした被害者が出ている?」 ベイーレ「ボストレーウィルスを改良したのよ」 リオール「……お前が生み出したのか……?」 ベイーレ「ふふ……そうよ……。      すべては、私の故郷をめちゃくちゃにした本国の研究者達に復讐するため。      そして、これ以上私の故郷を踏み荒らさせないため」 リオール「だが、なぜお前がそれに感染している?」 ベイーレ「あきらめたのよ、あなたがこの島へ来た時に。      いずれは全てが白日の下にさらされる。      私は生物兵器を使って大量虐殺をした犯人よ。      引くに引けないところまできてしまった……」       リオール「……だとしたら、俺は道連れか?」 ベイーレ「……リオール、感染の自覚があるの?」 リオール「俺の最初の症状は視覚か……意識ははっきりしているのに、目がかすむ」 ベイーレ「道連れ……と言われればそうかもしれないわね。      あなたも本国の人間、きっとこの事件が解決しても事実は隠蔽されたままだと思ったから。      あなたの仕事次第で事実が隠されるかもしれない……。      ……そう考えると、憎かった……」       リオール「ボストレーウィルスは空気感染だ。      あんたの作ったボストレーウィルス亜種は島の人間にも感染してしまうんじゃないか?」       ベイーレ「改良したボストレーウィルスは空気感染ではなく、経口感染。      研究員の時と同じ、食事にウィルスを含ませたわ」       リオール「……そうかい……それなら……」      ルージェ「……なぜ、私を襲ったのですか?」 ベイーレ「……さあね、早かれ遅かれ、この事件は終わる。      それを遅らせたかったのかしら……。      ……理由をつけるなら……嫉妬だったのかもしれないわね……」       ルージェ「嫉妬……?」 ベイーレ「主人に自分の仕事を認められ、成果をあげていくあなた。      私の主人は国の研究者だった。      いくら成果をあげても手柄は横取り、認められることなんてなかったわ」       ルージェ「……私には理解しがたい感情です……」       ベイーレ「ふふ、それはそうよ、嫉妬は簡単な感情じゃないもの。      ……それよりも、なんで私を殺さなかったの?」       ルージェ「……分かりません。      突然制御不能になりました」       リオール「それはルージェがお前を仲間だと認識したからだよ」 ベイーレ「仲間……ね……。      皮肉なものね、あなたが仲間と認識した女が全ての元凶だったのよ。      ……ああ……私も視覚がなくなってきた……。      このまま五感がなくなって死んでいくのね……」       リオール「時間がない、ベイーレ、今すぐボストレーウィルス亜種のデータをよこせ」 ベイーレ「……この携帯メモリにデータが入っているわ。      ……もう、手遅れだろうけどね」 (隔離研究施設にトレッドが現れる) トレッド「今までの会話はルージェを通して全て聞かせてもらった」 リオール「トレッド? トレッドなのか?」 トレッド「ああ、遅くなった」 リオール「何が遅くなった、だ。      島に来るどころか、俺を隔離施設に留置していた奴がよく言うぜ」       トレッド「事情が変わった。      お前の想定したボストレーウィルス亜種は空気感染はしない」       リオール「はっ……自分が安全だと思ったらこの始末か」 ベイーレ「ふふ、言った通りでしょ?      本国の人間は手柄ばかりを求めている」       トレッド「何と言われようと構わん。      ルージェ、その女のメモリーを解析しろ」       ルージェ「了解しました」 ベイーレ「そのメモリにはあなた達の言うボストレーウィルス亜種のデータが入っているわ。      オペレーションシステムごと、ね」       トレッド「オペレーションシステムごと?」 ベイーレ「この施設のマスターコンピュータから抜き取ったデータだもの」 トレッド「抜き取った、だと?」 ベイーレ「ええ、データを抜き取った後、この施設のマスターコンピュータは物理的に破壊した。      ルージェを襲ったこの斧でね。      すぐにデータを取り出すのなら、同等のコンピュータ性能が必要になるわね」       トレッド「本国に戻るしか解析は不可能か……」 リオール「おい、トレッド、こっちは時間がないんだ。      もちろんなんとかしてくれるんだろうな?」       トレッド「……ああ、分かっている……。      ルージェ、バイオスモードに切り替えてこのメモリからオペレーションシステムをインストールしろ」       ルージェ「了解しました」 リオール「おい、ルージェにオペレーションシステムをインストールするだと?」 トレッド「ああ、お前は知らなかったかもしらんが、ルージェはマスターコンピュータ並の処理速度を持つ。      この島のマスターコンピュータ程度の性能なら持ち合わせて……」       リオール「そういうことを聞いているんじゃない!      つまりは、ルージェをフォーマットするということか?」       トレッド「ああ、そうだ」 リオール「ルージェをただのコンピュータにするというのか?」 トレッド「何を言っているんだ、ルージェはもとからコンピュータで制御されたアンドロイドだ」       リオール「お前の方こそ知らないのかもしらんが、ルージェは人工知能を搭載している。      おい、ルージェ、トレッドの命令は、お前に死ねと言っているんだぞ」       ルージェ「……死……?」 リオール「ああ、フォーマットするということは、お前の記憶がなくなるということだ」 ルージェ「…………」 リオール「お前が今感じている感情が、『怖い』という感情だ。      ……俺がお前に最初に教えた感情だったな」       ルージェ「……怖い……今までの記憶がなくなってしまうのは……怖い……。      私が、私でなくなってしまうこと……」       トレッド「リオール、分かっているのか?      お前の症状も進行している、時間がないのは分かっているはずだ」       リオール「分かっては……いるさ……」 ルージェ「マスター? 生命反応が弱くなっています……。      大丈夫ですか……?」       リオール「ははっ……次に教えた感情が『心配』だったか……。      ルージェ、目の前にいるのか?      く……次は感覚神経か……ベイーレ、聞こえているか?」       ベイーレ「聞こえているわよ。      ただ、私は今、立っているのか倒れているのかも分からないけどね……」       リオール「……俺はどうすればいい?」 ベイーレ「何で私に聞くのよ」 リオール「お前が女だからだよ」 ベイーレ「えっ?」 リオール「ルージェだって、女としてプログラムされた人工知能だ。      こんな時、女はどう行動するのか知りたくて、な」 ベイーレ「ふふ……最期は恋愛相談?      ……そうね、もし私がルージェの立場なら……」       ルージェ「ベイーレさん、最後まで言ってもらわなくても結構です」 リオール「ルージェ……?」 ルージェ「……マスターの……リオールのためなら……」