Format for Virus File No4. Imitative ■ リオール 20歳 ♂ 【強気系】 ■ ルージェ 16歳 ♀ 【無感情系】 ■ ベイーレ 19歳 ♀ 【強気系】 ■ トレッド 29歳 ♂ 【クール系】 (地質調査施設エレベーター内) リオールM「そうして、俺達は再び地質調査施設へ向かった。       本国へ戻れない以上、ルージェだけが希望の光だ。       人工知能に指示されて所有者が行動を起こす、か。       そのうち、アンドロイドが人間を支配するんじゃないだろうか。       そんなことを思いながら、俺達はエレベーターで地下へとくだっていった」 ルージェ「ボストレーウィルス濃度……この地点だけ極端に低くなっています」 リオール「この地点だけ?」 ルージェ「大気中の解析を開始します」 リオール「ボストレーウィルスの発生源はもっと下だったはずだ。      そして、ここよりも上の方がボストレーウィルスの濃度が高い……か」       ルージェ「解析結果出力、この地点ではロンクス線が多く感知されています」 リオール「ロンクス線?」 ルージェ「この地質調査で先月報告された放射線です」 リオール「そのロンクス線のせいでボストレーウィルスの濃度が下がっている、と?」 ルージェ「さらに解析が必要ですが、ロンクス線が少なからずボストレーウィルスに影響を与えているようです」 リオール「……これは新しい前進か?」 ルージェ「はい、現時点では断言はできませんが、ボストレーウィルスの駆除が可能かもしれません」 リオール「……っ! はは……なんとか助かるかもしれないんだな……。      ぬか喜びにならなければいいが……」       ルージェ「マスター、生体活動が活発になっています。      いかがされましたか?」       リオール「ああ、これは嬉しい、という感情だよ」 ルージェ「嬉……しい……」 リオール「とにかく、いいことだ。      ルージェも喜べよ!」       ルージェ「……はいっ!」       (島の隔離研究施設) ベイーレ「ボストレーウィルスの駆除方法が見つかった!?」 リオール「ああ、まだ確実ではないが、ある放射線を照射するとウィルス駆除が可能かもしれないということだ」 ベイーレ「そ……そう……」 リオール「どうした? 嬉しくないのか?」 ベイーレ「えっ? いや……あまりに急なことで驚いちゃって……」 リオール「確かにそうだな、俺もぬか喜びはしたくないしな」 トレッド「ルージェからの解析データを受け取った」 リオール「対応策はあるのか?」 トレッド「ああ、先月報告されたロンクス線を、現在総力を挙げて解析中だ」 リオール「あまり時間がないんだ、頼んだぞ」 トレッド「分かっている」 トレッド「ロンクス線放出装置を試作段階だが作成した。      島に送るが、まだ量産体性には入っていない。      まずは、隔離施設に設置してボストレーウィルスの拡大を防いでくれ」       リオール「仕事が早いな、分かった」 リオール「これが俺たちの希望ってわけだ」 ベイーレ「希望の光のわりに無骨ね」 リオール「言うなよ。      ともあれ、これで助かるかもしれないんだ」                   ルージェ「現在のボストレーウィルスの解析率は89%です。      マスターのボストレーウィルスの感染率を検査します」       リオール「ああ……」 ルージェ「結果が出ました、マスターのボストレーウィルスの感染結果は陰性です」 リオール「やった……!」 リオールM「ロンクス線の発見により、ボストレーウィルスの解析は一気に進んだ。       俺の調査員としての仕事はほとんど終わったということだ。       そうなると時間が過ぎるのが早く感じる。       俺がこの島へ来てもう3日、後はルージェとトレッドがなんとかしてくれるだろう」 ルージェ「マスター」 リオール「ん、何だ?」 ルージェ「ボストレーウィルスの解析を進めていく上で気になる点があります」 リオール「気になる点?      ロンクス線を照射すればボストレーウィルスは死滅する、それでいいんじゃないか?」       ルージェ「はい、その点は問題ないのですが……」 リオール「……どうした?      珍しいな、ルージェが言葉を濁すなんて」       ルージェ「……この感情は、心配、という感情でしょうか。      正常な思考ができません」       リオール「感情が芽生えてきたのか……?」 ルージェ「私の人工知能には学習機能が搭載されています。      人間の感情も学習し、データとして刻まれていきます」       リオール「なるほど……な。      それで、気になる点というのは何なんだ?」       ルージェ「ボストレーウィルスの駆除は問題ないのですが、症状が現れるまでの時系列が気にかかります。      また、症状が出ている患者への治療法が確定できません」       リオール「ボストレーウィルスの駆除だけでは治療にならないということか?」 ルージェ「症状が出ている患者、及び、ボストレーウィルスによって死亡した患者の解析を行いました。      いずれも、神経細胞での神経伝達物質の遮断が起こっています」       リオール「待て、それはロンクス線によってボストレーウィルスを駆除した後にか?」 ルージェ「はい、ボストレーウィルス駆除後も症状が悪化している患者がいます」 リオール「それは、ボストレーウィルスによって神経細胞が損害を受けたということではないか?」 ルージェ「いえ……症状が進行しています」 リオール「おい……根本的な解決になっていないということか?」 ルージェ「……はい……」 リオール「くそ……これじゃあ、まだ時限爆弾を背負ったままか……。      ……ん? 何の臭いだ?」 ルージェ「焦げ臭い……臭いがしますね」 リオール「厨房の方か?      確かベイーレが夕食を作っていたはずだが」       ルージェ「気になります、見に行きましょう」 リオール「そんなに気になるか?      まあいい、行ってみるか」       ルージェ「……嫌な……予感がします……」 リオール「おーい、ベイーレ、なんだこの臭いは」 ベイーレ「え? 何?」 リオール「何、じゃないよ、なんだよこの臭いは」 ベイーレ「臭い? 臭いなんてしてないわよ」 リオール「お前の鼻は腐ってんのか。      あー、これか、こんなに焦がしやがって」       ベイーレ「あー! 野菜炒め作ってたフライパン、焦げついちゃってる……」 リオール「こんなに焦がして、臭いで気付かなかったのか?」 ベイーレ「だから、臭いなんてしてないじゃない」 リオール「あのなあ……」 ルージェ「ベイーレさん、私の手のひらの臭いをかいでもらえますか?」 ベイーレ「はあ? なんであたしがあんたの手の臭いなんかを……」 ルージェ「検査です、お願いします」 ベイーレ「……分かったわよ。      ……別に、何の臭いもしないけど」       リオール「本当か?      ……うわっ!? なんだこの臭いは!」       ベイーレ「え?」 ルージェ「まさかとは思いましたが、ベイーレさんは嗅覚障害のようです。      障害というよりは、もはや機能していないようですね」       ベイーレ「……そんな……まさか……」 リオール「ベイーレにもボストレーウィルスの駆除は行ったはず……」 ベイーレ「……もう……ここまでか……」 リオール「あ、おい、ベイーレ! どこに行くんだ!?」 ルージェ「マスター」 リオール「なんだよ、こんな時に!」 ルージェ「先ほどの検査の際に、ベイーレさんのボストレーウィルス検査も実施しました。      嗅覚神経にボストレーウィルスに酷似したウィルスを発見しました」       リオール「酷似した……だと?」 ルージェ「はい、ボストレーウィルスはロンクス線により消滅しているため、異なるウィルスだと思われます」 リオール「……待て、ボストレーウィルスに酷似したそのウィルスが元凶か?」 ルージェ「まだ検査、解析が必要ですが……」 リオール「……分かった、これより、そのウィルスをボストレーウィルス亜種と想定する。      ルージェはボストレーウィルス亜種の解析を進め、本国にデータを送ってくれ。      俺はベイーレを探してくる」       ルージェ「了解しました。      マスター」       リオール「何だ?」 ルージェ「……万が一のことを考えて、各種耐性物質の接種を行わせてください」 リオール「万が一?      ……ああ、頼む」       ルージェ「……各種耐性物質の接種が完了しました。      ……お気をつけて」 リオール「……ああ」 (リオールが隔離研究施設から出て行く) ルージェ「……現地でのマスターの命令により、ボストレーウィルス亜種のデータを転送します」 トレッド「ボストレーウィルス亜種だと?」 ルージェ「はい、詳細は転送したデータをご覧になってください」 トレッド「……分かった。      こちらで解析したデータもそちらに転送する。      引き続きリオールの指示に従え」       ルージェ「了解しました」 (隔離研究施設近くの海岸) リオール「こんなところにいたのか」 ベイーレ「……何? 探しにきてくれたの?」 リオール「どうしたんだ急に、今まではこんなことはなかっただろう?      自分がボストレーウィルスに感染している時ですら動揺していなかったのに」       ベイーレ「……あなたには関係ないわよ……」 リオール「いざ症状が出てきたら急に怖くなったか?」 ベイーレ「そうね、怖くないと言えば嘘ね。      ……もう時間がないことも分かった」       リオール「あきらめるなよ、それをなんとかするために俺が派遣されたんだ」 ベイーレ「もう、終わったのよ」 リオール「え? ベイー……レ……?」 ベイーレ「……睡眠薬を打ったわ。      しばらく眠っていて……そのまま、ずっと眠ってくれてもいいんだけどね……」