Format for Virus File No3. Isolation ■ リオール 20歳 ♂ 【強気系】 ■ ルージェ 16歳 ♀ 【無感情系】 ■ ベイーレ 19歳 ♀ 【強気系】 ■ トレッド 29歳 ♂ 【クール系】 (島の隔離研究施設) ベイーレ「あら、思ったより早かったわね」 リオール「ああ、俺らは地質研究者じゃないからな。      ウィルスの原因が地質調査にあったことだけ分かれば用は無い」       ベイーレ「あの子は?」 リオール「あの子?      ああ、ルージェか、あいつは一人で地質調査してるよ」       ベイーレ「え? 連れてこなかったの?」       リオール「俺は帰ると言ったんだが、あいつは調べた方がいいってうるさかったから置いてきたよ」 ベイーレ「そう……人工知能ともなるとそういった反応もするのね」 リオール「それよりも、そっちの調査はどうだった?」 ベイーレ「焦らないで、調書を見てたんだけど、ウィルスの潜伏期間は約10日。      つまり、私は5日、あなたには9日の猶予があるわ」       リオール「潜伏期間10日……か……」 ベイーレ「ただし、感染からは約14日で死に至るわ」 リオール「身体症状が現れたら4日でアウトか」 ベイーレ「そういうことになるわね」 ルージェ「ただいま戻りました。      独断で行動して申し訳ありません」       リオール「帰ってきたか……って、お前!?」 ルージェ「地質調査の際、地熱で多少破損してしまいました」 (ルージェの左腕が大破している) リオール「破損って、お前、大丈夫なのか!?」 ルージェ「搭載機器に問題はありません」 ベイーレ「左腕、ひどい怪我じゃない。      それ……血?」       ルージェ「いえ、私はアンドロイドです。      これは体内に流れるオイルです。      機能的には人間に流れる血液と似たような役割を担っています」       ベイーレ「外見だけじゃなく、中身もリアルに人間に近づけてあるのね」 リオール「そんなことより、治療だ」 ベイーレ「治療じゃなくて、修理、でしょ?」 リオール「え? あ、ああ、そうだな……」 ルージェ「どうしたのですか、マスター、いつもと様子が違いますが」 リオール「ばか、心配してるんだよ。      ……まあ、こんな状態でも平然としているところを見ると拍子抜けするけどな」       ルージェ「心……配……?」 ベイーレ「心配してくれるご主人様でよかったわね」 ルージェ「え? あ……はい……」 リオール「それよりも、俺は機械の修理なんてできないぜ?」 ルージェ「心配……ありません、ここにある機器で自己修理が可能です。      ベイーレさん、医務室をお借りしてよろしいですか?」       ベイーレ「え? 医務室?      人間と同じ治療でいいの?」       ルージェ「はい、欠損部品は後日、無人輸送船でここまで輸送してもらいます。      私は体のほとんどが人間の細胞で構成されているので、人間の治療で構いません」       ベイーレ「そう、それなら案内するわ、ついてきて」 (リオールのいる部屋にベイーレが入る) リオール「ん? ベイーレはもう戻ってきたのか?」 ベイーレ「一人で出来るから大丈夫です、って」 リオール「そうか、それなら話を進めようか。      やはり、原因は地質調査のようだ。      研究用のエレベーターで地下に進むにつれ、ボストレーウィルスの濃度が高くなっていた」       ベイーレ「研究者にボストレーウィルスが感染し、それが地上に出て拡散したというわけね」 リオール「……それで気になったんだが、ここの研究者は地質調査が危険なことは知っていたのか?」 ベイーレ「どういうこと? 質問の意味が分からないわ」 リオール「地質調査施設だよ。      なぜこの隔離施設並のウィルス研究・隔離能力がある?」       ベイーレ「……隠していても無駄のようね。      本国に報告するずっと前からボストレーウィルスは発見されていたのよ」       リオール「それは表上、だろ?      そうでなければあそこまでの施設は本国の援助なしでは整えられない」       ベイーレ「そう……ね。      私はこの島出身の研究者だから、本国から派遣された研究者のことは私は分からないわ。      裏で彼らがなにかやりとりしていたのかもね」       リオール「ベイーレは地質調査の施設に関わりはなかったのか?」 ベイーレ「……そんなことよりも、治療には後どれくらいデータと時間が必要なの?      私達には時間がないのよ」 リオール「……そうだな……ルージェ、聞こえるか?      ボストレーウィルスの情報取得率はどれくらいだ?」       ルージェ「現在までのボストレーウィルスの情報取得率は32%です」 リオール「後はどんなデータを集めればいい?」 ルージェ「まだ多くの臨床データ、ウィルスの熱や放射線による耐性調査。      化学反応による耐性調査、治療の際の人体への影響……」       リオール「あー、分かった、それくらいでいいよ。      とにかくやることはたくさんある、ってわけだ」       ルージェ「あらかじめ、私の内部には実験装置が搭載してあります。      現在も各種放射線による耐性調査の進行中です」       ベイーレ「まさに歩く実験室ね。      私達がやることはないんじゃないかしら」       リオール「そんなことはないさ。      ルージェに指示を出す役が必要だろう」       ベイーレ「そんなの、本国からの遠隔操作でいいじゃない。      こうして離れても通話できるんだし、映像だって転送できるんじゃないの?」       リオール「そうかもしれないが、俺達も感染している以上、指をくわえて待ってることなんてできないだろう」 ベイーレ「まあ、そうだけどね。      今日はもう遅いわ、食事にしましょう。      病院食だけど我慢してね」 (リオールの寝室) ベイーレ「ちょっと!      リオール起きて!」       リオール「ん……? なんだ? やたら早く起こすんだな……」 ベイーレ「あなたが乗ってきたヘリ、壊されてるわよ!」 リオール「……はあ?」 ベイーレ「信じられないならついてきて!」 リオール「お、おい……」 (島のヘリ離着地点) リオールM「俺が島へ来て二日目、いきなり叩き起こされて目の当たりにした現実は信じがたいものだった。       沸きあがってきたのは、怒りや恐怖ではなく、呆れるといった感情だった」 リオール「……こりゃまた、ひどく壊されてるな。      修理は完全に不可能か」       ベイーレ「本国からの通達がきたわ。      この島は完全に世界から隔離された、という内容の文面がね。      島から出ることは完全に不可能になったわ」       リオール「島自体が隔離?」 ベイーレ「ボストレーウィルスの解析がまた進んだみたいね。      感染力は過去に例がないくらい強いらしいわ。      繁殖力も、ね」       リオール「ということは、島から出る移動手段は全て封鎖されたわけか」 ベイーレ「ええ、このまま治療方法が見つからなければこの島を見捨てるつもりみたいね」 リオール「よくこの島までヘリを壊しにきたな」 ベイーレ「ロボットよ。      ルージェのようなデータ収集ではなく、破壊工作用のロボットをこの島に送り込んたんでしょうね」       リオール「もう怒りよりも呆れだよ。      任務に失敗したら、この島と心中してくれということか」       ベイーレ「まあ、下手すれば人類滅亡の恐れもあるでしょうしね」 リオール「無駄だとは思うが、抗議してみるか。      ……おい、トレッド、聞こえるか」       トレッド「聞こえている」 リオール「これはどういうことか説明してくれるか?」 トレッド「お前が考えている通りだ」 リオール「なるほどね、それも上層部からの指示ってわけか」 トレッド「そうだ、と言っておこうか。      私は反対したのだがな」 リオール「まあ、お前との通話が繋がるだけでも、その誠意は伝わるよ」 トレッド「そうか……こちらでもボストレーウィルスの対応策を全力で調査中だ。      情報は随時ルージェに転送しておく。      お前は引き続き調査を進めてくれ」       リオール「言われなくても」 トレッド「……ずいぶんと素直になったな」 リオール「俺の立場になってものを考えてみろ。      ここで抗議したところでどうなる?」       トレッド「……そうだな……」 リオール「また何かあれば連絡する」 トレッド「ああ、よろしく頼む」 ベイーレ「事故とはいえ、当事者としてはたまったもんじゃないわね。      まあ……実際、私が上層部だったらそうすると思うわ」 リオール「慰めにもなってねぇよ。      よくあんたは冷静でいられるな」       ベイーレ「なんかもう、覚悟決まっちゃったわよ。      助かるためには私たちがやるしかない、でしょ」       リオール「そうだな……」 (リオール達のところにルージェが近寄る) ルージェ「マスター、いいですか?」 リオール「ん? 何だ、いたのか、ルージェ」 ルージェ「ボストレーウィルスの解析を進めていくうちに気になる点が出てきました」 リオール「進言機能も搭載か。      それで、気になる点というのはなんだ?」       ルージェ「もう一度、地質調査施設でデータをとりたいのです」 リオール「ウィルスの発生源ということだけだろ?      前にも調査に行ったし、また行く必要はあるのか?」       ルージェ「空気中のボストレーウィルスの分布図解析を行った結果、地質調査施設の地下1681km地点の……」 リオール「あー、わかったよ、行けばいいんだろ」