Format for Virus File No1. Infection ■ リオール 20歳 ♂ 【強気系】 ■ ベイーレ 19歳 ♀ 【強気系】 ■ トレッド 29歳 ♂ 【クール系】 ■ 患者 ?歳 ♂ ※トレッドと被り役 リオールM「ボストレード島、人口2万人の島。       地質調査をはじめ、各種研究のために国から援助が出ていて、それで島の経済は成り立っている。       先日、この島でバイオハザードが発令され、俺はその調査に駆り出された。       俺はウィルス研究者でも、特務捜査官でもない、ただのヒラ調査員だ。       まあ、国直属の調査員であるから、公務員とも言える。       普段は建設現場の調書作成や、観光地の資料作成など、外回りの仕事が多い。       仕事のフットワークの軽さには自信があるが、ウィルスの専門知識などはない。       ましてや、バイオハザードが発令された現場の調査だ、なんで俺が選出されたのか分からない。       ヒラ調査員の身分では仕事なんて選べないし、俺の年収の数倍もの特別手当を提示されては……。       正直なところ、乗り気ではなかったが、俺は単身、ヘリでボストレード島に向かった」 (ヘリが島に着陸し、ベイーレが迎えに来ている) リオール「それで、地質調査班の研究者が次々と倒れた、と?」 ベイーレ「ええ、そうよ。      島の医療機関で原因を究明してるんだけど、未だ不明でね」       リオール「未だ不明……か。      いよいよなんで俺が派遣されたのか分からないな」 ベイーレ「あなたは何の調査員なの?」 リオール「俺はただのヒラ調査員だよ。      普段は建設現場の監督調査や観光案内の調書作成なんかもやっている」       ベイーレ「へえ……なんでもやっているね。      じゃあ、万能と思っていいのかしら?」       リオール「だから言っただろう、俺はただのヒラ調査員だ、あまり過度な期待はするな。      それはそうと、ええと……」       ベイーレ「私はベイーレよ。      この島の研究所でウィルス学の研究をしているわ」       リオール「ほう、研究成果が優秀なボストレード島の研究者さんか。      あんたが出迎えに来たということは、原因はウィルスであるということの見当はついているのか?」 ベイーレ「当然よ、バイオハザードが発令されたんだから。      だからあなたもワクチン接種なんかを受けてきたんじゃないの?」       リオール「ああ、そうだよ、あらゆるワクチンを接種してきた。      見てくれよ、この腕の注射の跡」       ベイーレ「ひどいわね、何本注射打ったのよ」 リオール「ざっと30本は注射打ってきたな。      抗体としては200種を超えている」       ベイーレ「よくそこまでしてこの島に来たわね」 リオール「仕事だからな。      俺もそんなに時間はないんだ。      実際に被害に遭った人達に会わせてくれないか」       ベイーレ「ええ、わかったわ。      現在は症状が見られる人と、感染の可能性がある人は隔離施設に収容されているわ。      ついてきて、案内してあげる」             (隔離研究施設の一室、ガラスの向こうに大勢の患者が寝ている)       リオール「これは……ひどいな……」 ベイーレ「今のところはまだ死者はいないけど、時間の問題でしょうね……」 リオール「隔離ガラスのむこうからでも状況は分かるな……。      症状は……神経系を侵されているのか?」       ベイーレ「ええ、症状が悪化すると神経系に異常をきたして衰えていくようね」 リオール「感染者と話はできるのか?」 ベイーレ「その手元のマイクで通話することはできるけど……」 リオール「けど……なんだ?」 ベイーレ「……話をしても無駄だと思うわ」 リオール「……とりあえず話はしてみよう。      これを押せば通話できるんだな。      聞こえるか?」       ベイーレ「……今あなたが通話しているのは、最も症状が進んだ患者よ」 リオール「反応がないな……昏睡状態なのか?」 ベイーレ「昏睡状態ではないわ。      出された食事は口にするし、時々独り言のように喋ったりもしている。      ただ、こちらからの行動に対して全く反応がないのよ」       リオール「そうか、話ができそうな患者はいるか?」 ベイーレ「待ってね、この人なら……」 (ベイーレは手元の操作盤を操作する) リオール「……急な通話失礼する、私は本国から派遣された調査員のリオールだ」       患者「調査員……?」 リオール「ああ、この島で起こっているバイオハザードの調査に来た。      辛いだろうが、症状を話してくれないか?」       患者「症状……か……。    痛みも苦しみも感じない……。    目も見えない、臭いもしない、全身の感覚もなくなりつつある……」     リオール「耳は聞こえるのか?」 患者「……なんとか、な……。    私は地質調査のオペレーターをしていた……。    音声を扱う仕事をしていたからかもしれんな……」        リオール「どの感覚からなくなっていったんだ?」       患者「いつの間にか嗅覚が失われたことに気付いた。    昨日……視覚が失われた……。    そして、今朝倒れた……。    今では感覚もなくなってきている……自分が寝ているのか、息をしているのかも……」     リオール「少しずつ感覚がなくなってしまっているのか。      発病は昨日よりも……」 患者「一昨日から何も口にしていないが、腹も減らない。    それでも食事が出されれば食べてはいるが」     リオール「おい、待て、俺の話を……」       患者「最近は感覚も薄れてきている。    感覚はないのに体は動くのが不思議だ」     リオール「……聞こえているか?」 患者「……どうした?    リオールと言ったか、他に聞きたいことはないのか?    俺に残された時間はもう少しかもしれない……」     ベイーレ「……ついに聴覚も奪われてしまったようね……」 リオール「おい、聞こえていたら自分の名前を言ってくれ」 患者「……もう帰ってしまったか……。    話の途中だったのにな……。    ベイーレはいるか?」     ベイーレ「いるわ、そろそろ食事の時間ね、準備するわ」 患者「……おかしいな、通話ボタンを押しているつもりなんだがな……。    まあ、もうすぐしたら食事を届けてくれるだろう」     リオール「まさか話の途中で症状が進行するとはな……」 ベイーレ「この症状の進行はいつも突然よ。      診察しても、数時間後には別の症状を訴えてる」       リオール「それでか、送られてきたデータでは何も分からなかった。      過去のどの症例にもあてはまらなかったからな」       ベイーレ「だから、あなたがここに派遣されたというわけね」 リオール「お前は大丈夫なのか?」 ベイーレ「私は……大丈夫だと信じたいわ。      一通り検査も受けたし、まだ症状も出ていない」       リオール「検査か……。      送られてきたデータの机上検査だと、どの患者にも異常は見られないようだったが」       ベイーレ「……だから、あなたが派遣されてきたんでしょう?      頼りに……してるわよ……」       リオール「期待されても困るけどな。      俺はひとまず本国に戻る。      データは本国に転送されている、現地調査はもう十分だ」 ベイーレ「もう帰るの?」 リオール「ああ、俺は医者でも研究者でもない、ここでこれ以上調査しても意味がないだろう。      俺の仕事は現地調査……それと……」       ベイーレ「それと?」 リオール「……いや、なんでもない。      じゃあな」       (リオールが立ち去る)       ベイーレ「……帰っちゃったか……。      所詮、本国の人間はあんなもんよね……」                   (本国へ帰るリオール、ヘリの中)       リオール「ボストレード島調査に向かっていたリオールだ。      いま帰還した、着陸許可を願う」       トレッド「リオールか。      着陸を許可する……が、着陸はD-72地点で行え」       リオール「D-72地点?      なぜそんなに離れた地点に着陸する必要がある?」       トレッド「これは上層部からの通達だ。      事情は後で説明する」       リオール「おいおい、あんだけワクチン打ったのに俺が感染していると疑っているのか?」 トレッド「そう燃料も積んでいなかっただろう?      D-72地点までは遠い、早く着陸しろ」       リオール「念には念をってことか……分かったよ」 リオールM「もう、おおよその予想はついていた。       だが、こうもあっさりしているとは……。       俺はヘリから降り次第、狭い小部屋に通された。       周りには誰もいない、ヘリの離着陸地点も恐らくは無人の隔離施設だろう。       数時間も待たされた後、小部屋のモニターに俺の上司のトレッドが映し出された」 リオール「で、トレッド、これはどういうことか説明してもらおうか」       トレッド「単刀直入に言おう、お前も感染している」       リオール「検査もしてないのにあっさりそんなこと言うのかよ」 トレッド「お前が島へ調査に行っている間に新たな事実が発覚した。      このバイオハザードの原因は新種ウィルスだ」       リオール「新種とはいえ、こっちは200もの種類のワクチンを接種したんだぜ。      亜種程度なら効果は……」       トレッド「お前に接種したワクチン、その全ては効果がなかった」 リオール「……おい、ずいぶん待たせたのもそのせいか……?」 トレッド「ああ、お前に感染したウィルスを解析した」 リオール「まさか、俺をウィルスのサンプリングのために島に送ったのか?」       トレッド「この仕事を受ける前にした契約は覚えているな?」 リオール「ああ、覚えているよ。      今回の調査にはウィルス感染の危険性もある、ということだったな」       トレッド「そういうことだ」 リオール「なにがそういうことだ!      最初からサンプリングのために俺を調査に向かわせたんじゃないだろうな!      ちっ……こんなにもあっさり切り捨てられるとはな……。      もちろん治療方法は見出せているんだろうな?」 トレッド「いや、まだだ。      この新種のウィルスはボストレード島で発見されたため、ボストレーウィルスと名づけられた」       リオール「そんなことはどうでもいい!」 トレッド「リオール、お前が助かるには、お前自身が島へ行って調査を続けてもらう必要がある」 リオール「ふざけるな!      もう感染している俺を捨て駒扱いかよ……!」 トレッド「捨て駒とは思っていない、お前の働き次第でボストレード島の住民の命は……」 リオール「そんな奇麗事は聞きたくねぇよ!」 トレッド「……無理な依頼だということは重々承知だ。      お前には再度島へ行って、調査を続けてもらいたい。      その際に、現在試作中の人工知能を有したアンドロイドを連れていってもらいたい」       リオール「人柱な上にロボットの実験台ってわけか……もう、どうでもいいよ……」 トレッド「ルージェ、入れ」 (アンドロイドが部屋に入る) トレッド「ルージェは人工知能を搭載したデータ収集型アンドロイドだ。      インターフェイスは人と全く同じ、口頭でデータを蓄積していく。      これからどのようなデータを集めていけばいいかはルージェのメモリにインプットしてある。      ……健闘を祈る」