重なる波紋に落ちる雫 第4話 重なる波紋 ■ 悠希(ゆうき) 17歳♂ 一人暮らしの高校生男子。普通。 頼まれると断れない性格。 ■ 雫(しずく) 10歳♀ 謎な女の子。 口数は少なく、大人しい。 ■ 煌祐(こうすけ) 17歳♂
主人公とは別の学校に通っている。 中学校からの親友。お調子者。 ■ 滴菜(しずな) 36歳♀ 雫の母親。 強い意志の持ち主であり、家族思い。 煌祐「転送準備は完了しました。    いきますよ」   滴菜「はい、お願いします」 雫「お母さん……」 滴菜「大丈夫、大丈夫よ……」 煌祐「システム、オールグリーン。    転送を、開始」   雫「お父……さん……」 煌祐「転送を完了。    ……あとは精神をここに引き戻すだけだな。    成功……してくれ……」       滴菜「う……」 煌祐「目が覚めましたか……!?」 滴菜「あ……煌祐さん……私は……」 煌祐「記憶障害はありませんか?    無事に悠希に会えましたか?」   滴菜「はい、私も一目ですが悠希に会えました。    ……雫、雫は!?」   煌祐「懸念していた心配はないようです。    隣で眠っています」   滴菜「雫、雫!?」 雫「……う、うーん……。   ……お母さん……?」   滴菜「雫!    よかった……無事にお父さんに会えてよかったね……」   雫「うん、お父さんにだっこしてもらった……。   嬉しかったよ……とっても……」   煌祐「ふー、実験は成功でした。    こんな危険な実験をさせてしまい申し訳ありません」   滴菜「いえ、私の方こそ無理なお願いをきいて頂き、ありがとうございました」 悠希「滴菜! 雫!    大丈夫か!?」   滴菜「えっ……?」 雫「あ……お、お父さん……?」 悠希「よかった……!    二人とも無事だったんだな……」   滴菜「あ、あなた……?    なんで……ここに……?    嘘……これは、夢……?」   煌祐「滴菜さん、精神転送前にお話しませんでした?    タイムパラドックスのお話。    おそらく、過去でのお二人の行動で、現在が変わってしまったんです」   悠希「お前の現在では俺はどうなっていたんだ?」 滴菜「え? あなたは10年前に交通事故で……」 悠希「ああ、あの日のことか。    助かったんだよ、おそらくは雫のおかげでな」   雫「え? 私のおかげで?」 滴菜「雫、過去に行ってお父さんに何かしたの?」 雫「私、別に何も……。   あっ、ペンダント……?」   悠希「ああ、あのペンダントだ。    雫、あれに日付を書いていただろう?」     雫「うん……お父さんがいなくなっちゃった日……」 悠希「あれが雫達にとっての俺の命日だった、てわけだ。    煌祐に相談したら、その日は仕事を休んででも家に居続けろ、と言われてな」     煌祐「精神転送装置の研究中だったからな。    もしかしたら、と思って助言しておいたんだ」   滴菜「煌祐さん、これは……このままこの先、悠希と一緒に生活できるんですか?」 煌祐「何の問題もありませんよ。    僕の記憶の中では悠希は事故に遭ってなく、こうしてここにいるのが現実です。    滴菜さんが過去に行く前の現実ではお前、死んでたらしいな」   悠希「今となっては信じられない話だけどな。    雫、お前のおかげでお父さん助かったよ、ありがとう」   雫「ううん、お父さん……お父さん!!」 悠希「ははっ、俺が高校の時に現れた雫のまんまだな」 滴菜「ふふ、だって、ついさっき雫はあなたにだっこしてもらったんですもの」 煌祐「はぁ〜、いいなぁ……。    奥さん、僕にも誰か紹介してくださいよ〜」   滴菜「あら、煌祐さん、まだ結婚されてなかったんですか?」 煌祐「そうですよ〜、この研究一筋でやってきましたから。    実験も成功したし、これから遊ぶぞー!」   滴菜「煌祐さんには本当にお世話になりました。    私の知り合いでよければご紹介しますよ」   煌祐「お〜! よろしくお願いします!」 雫「煌祐さん、ありがとう!」 煌祐「おう、雫ちゃんもよかったな、お父さんとこれからも一緒だぞ」 雫「うん!」 悠希「そうだ、動物園に行かないか?    雫、お父さんが高校生の時に動物園に行きたがってたろ?」     雫「えっ、本当に?」 悠希「ああ、煌祐も来いよ。    どうせだから滴菜、煌祐に似合いそうな友達も呼んでやれよ」     滴菜「ええ、待ってね、何人かあたってみるわ」 煌祐「おおおっ、マジっすか!    お願いします!」 雫「お父さん」 悠希「ん? なんだ?」 雫「おかえりなさい!」 悠希「ああ、ただいま」