Knight Memory Tale 最終話 失くした記憶が呼んだもの ルフェリア:(♀) 強気、軍人 ディルグ:(♂) ぶっきらぼう、現実主義 リュティ:(♀) 元気でお気楽主義 ルフェリア:……なんだ……?       体が……軽い……。 ディルグ:……フェリア……ルフェリア。 ルフェリア:なんだ……?       ディルグ……? ディルグ:俺は、間違ったことをしたとは思っちゃいねーよ。 ルフェリア:え……?       何を言っているのだ? ディルグ:お前も、間違ったことはしちゃいねぇ。      少なくとも、俺はそう思うぜ。 ルフェリア:だが、私はお前をあんな目に……。 ディルグ:気にすんなよ。      ……最後にお前に会えてよかったよ。 ルフェリア:え? 最後って……どういうことだ? ディルグ:先に向こうで待ってるぜ。      じゃあな、姉貴。 ルフェリア:待って! どういうこと!?       行かないで……行かないで! ルフェリア:いやああああ! リュティ:お、お姉ちゃん、大丈夫? ルフェリア:はぁ……はぁ……。       すまない、大丈夫だ……。 リュティ:最近、お姉ちゃん、うなされてばっかりだよ……。 ルフェリア:すまないな、居候させてもらっている上に騒がしくして。 リュティ:ううん、いいよ、お姉ちゃん帰ってきてくれたんだし。      最初、お姉ちゃんが突然、うちに帰ってきた時はびっくりしたよ。      まだその時は戦争に負けたことは知らなかったんだもん。 ルフェリア:ああ……そうだな、リュティ達には一日遅れで敗戦が伝えられたからな。 リュティ:戦いが終わってもう三日……なんか、あんまり実感が沸かないな。 ルフェリア:そうか? リュティ:うん、だって、戦争に負けたのに生活は何も変わらないんだもん。      強いて言えば、町でファルム連合国の人をよく見るくらいかな。 ルフェリア:そうだな、ルサーガ王国はあの平野の戦いで降伏した。       圧倒的な戦力差と、士気の低下で攻城戦にまでもつれこむことはなかったからな。 リュティ:戦争のことはよく分からないけど、もう、戦争は終わったんだよね?      ルサーガ王国は負けちゃったけど、今まで通りの生活を送れるんだよね? ルフェリア:ああ、ファルム連合国は略奪や無用な殺戮は行わない。       戦争は「国の統合の戦い」だったんだ。 リュティ:じゃあ、お姉ちゃんはこのままずっとここにいてくれるの? ルフェリア:それは……。 リュティ:お兄ちゃんの目が覚めたら……また、行っちゃうの? ルフェリア:……すまない、私のせいなんだ、ディルグにこんな傷を負わせてしまったのは……。 リュティ:ううん、気にしないでよ、お姉ちゃん。      お医者さんだって……助かる可能性は……あるっ、って……。 ルフェリア:本当にすまない……。 リュティ:……もう、三日だよね……お兄ちゃんの意識がなくなって……。 ルフェリア:……ああ、そうだな……。 リュティ:……ねえ、お姉ちゃん、もし……もしお兄ちゃんの意識が戻らなかったら……。 ずっと……ここで暮らしてくれない? ルフェリア:…………。 リュティ:お父さんもお母さんも戦争で死んじゃって……。       本当のお姉ちゃんもいなくなっちゃって……。       お兄ちゃんもいなくなったら……あたし一人きりになっちゃうから……。 ルフェリア:リュティ……。 リュティ:あ……あは……そんなの、無理だよね……。      お姉ちゃんは将軍だもんね……。      立派なお屋敷だって、あるもんね……。 ルフェリア:いや……私は……。 ディルグ:俺の意識が戻って、ルフェリアもここで暮らす、っていう選択肢はないのか? ルフェリア:っ!? ディルグ!? リュティ:お兄ちゃん!? ディルグ:よっ、おはよ。 リュティ:お兄ちゃん! お兄ちゃんーー! ディルグ:痛っ! まだ傷口塞がってねぇんだから気をつけろよな。 ルフェリア:よかった……ディルグ……。 ディルグ:心配かけたな。      で、どうなったんだ? ルフェリア:え? あ……ルサーガ王国は敗北した。       まだ正式には発表になっていないが、ルサーガ王国の領土はファルム連合国のものとなる予定だ。 ディルグ:そうか、まあ、俺が生きているってことは、ルサーガの上官どもも生きてるってわけか。 ルフェリア:今後の人事は分からん。       ルサーガ国王も捕虜としている。 ディルグ:ファルム連合国ってのは甘い国だな。 ルフェリア:それが我が国の方針だからな。 ディルグ:それで、どうなんだ? ルフェリア:何がだ? ディルグ:俺の意識が戻って、ルフェリアもここで暮らす、ってことだよ。 ルフェリア:それ……は……。       ……私はお前にこのような目にあわせてしまった。       しかも、恩を仇で返す形で……。 ディルグ:なんだよ、まだ気にしてんのかよ。 ルフェリア:……当たり前だ、私はお前を本気で殺そうとしたんだぞ? ディルグ:ルフェリアが殺そうとしてたのは、ルサーガ王国兵の部隊長だろ? ルフェリア:……っ! ディルグ:俺が剣を交えたのはファルム連合国の将軍だ。 ルフェリア:ディルグ……。 ディルグ:そして、俺がかばったのは、ルフェリア、お前だよ。 ルフェリア:……私を……許してくれるのか……? ディルグ:許すもなにも、俺の目の前にいるのはファルム連合国の将軍じゃねぇ。      新しい姉貴のルフェリア、だ。      俺の知ってるルフェリアはそんな堅苦しい喋り方しないぜ? ルフェリア:……すまない……いや……ありがとう、ディルグ……。       私も……私もまたあの時のようにここで暮らしていいの? ディルグ:ああ、構わないぜ。 ルフェリア:ありがとう……また、釣りに行こうね。 ディルグ:おう、っと、なんか腹減ったな、リュティ、飯作ってくれ。 リュティ:うん! 待っててね!      三日分のご馳走作ってくるね! ディルグ:うお、俺はそんなに寝てたのか。      そりゃ腹減ってるわけだな。 ルフェリア:そうよ、こっちは気が気じゃなかったんだからね。       ……おかえり、ディルグ。 ディルグ:その顔を見るのは久しぶりだ。      おかえり、ルフェリア。 ルフェリア:うん、ただいま!