Knight Memory Tale 第七話 二人の戦士 ルフェリア:(♀) 強気、軍人 ディルグ:(♂) ぶっきらぼう、現実主義 ターグ:(♂) 偉そう、嫌なやつ サジタリス:(♂) おちゃらけ系だけど、軍師としての才能は秀でている ファルム兵士:(♂) ありきたりな忠誠心のある兵士 ルサーガ兵士:(♂) ありきたりな兵士 サジタリス:さて、布陣は終わったな。       ここからだと敵軍も目視(もくし)できるんだな。 ルフェリア:めずらしいな、お前が最前列に立つなんて。 サジタリス:まあな、どちらにせよすぐに下がって指揮に戻るけどな。       一応、お前のブランクを確認しておこうと思って、な。 ルフェリア:私が戦列を離れて……まだ一ヶ月程度だろう。 サジタリス:そうだな。 とはいえ、復帰でいきなり中央前列の将軍をまかせるんだ。       この目で一度は確認しておかないとな。 ルフェリア:もし、私がすぐに敗走するようなことがあれば? サジタリス:その時はその時、次の手もちゃんと考えてあるさ。       お前こそめずらしいぞ、戦う前から負けることを考えるなんて。 ルフェリア:……そうだな、なんでもない、聞かなかったことにしてくれ。 サジタリス:ま、構わないけどな。       ルフェリア、準備はいいか? ルフェリア:ああ、大丈夫だ。 サジタリス:そうか、では行くぞ!       中央前列、突撃! ルフェリア:いくぞ!       騎兵隊は私についてこい!       歩兵隊は騎兵で突き崩した戦列を攻撃だ! ファルム兵士:おおおー! サジタリス:……ふっ、心配はねぇようだな。 ルサーガ兵士:うおおお! ルフェリア:ふん、その程度! ルサーガ兵士:ぐああ! ルフェリア:騎兵隊! まだ突撃だ!       敵前列の中陣まで貫く(つらぬく)ぞ! ルサーガ兵士:おおお! ルフェリア:たああ! ルサーガ兵士:うわあ! ファルム兵士:ルフェリア様、伝令です!        歩兵隊が敵戦列に接触しました! ルフェリア:分かった! 騎兵隊に伝令だ!       前進突撃止め、左右に展開して突撃だ! ファルム兵士:ははっ! 了解しました! ルフェリア:この付近の騎兵は後ろへ下がって第二突撃準備だ!       ……っ!? ディルグ:よお、やっぱりいると思ったぜ。 ルフェリア:ディ、ディルグ!?       なぜお前がここに!? ディルグ:軍に入って戦いに行けばお前に会えるかもしれない、と思ってな。 ルフェリア:そういうことを聞いているのではない!       なぜ……なぜ再び戦いに身を投じた?       お前は戦争は嫌いなのではなかったか? ディルグ:ああ、俺は戦いは嫌いだぜ。      ただ、それは「この国の人間として」戦うことが嫌なだっただけだ。 ルフェリア:だから……!       だから、なぜお前はルサーガ兵士として戦うことを選んだ!? ディルグ:なんでだろうな。      ……お前に会うため、じゃあ答えになんねぇか? ルフェリア:意味が分からん……。       私はお前に言ったよな、次に会うとしたら戦場かもしれない、と。 ディルグ:ああ、覚えているぜ。 ルフェリア:私はまがりなりともファルムの人間だ。       そしてお前はルサーガの人間だ。 ディルグ:ああ、分かっている。 ルフェリア:……そうか……ならば……。       貴様は私の憎むべきルサーガの人間、敵だ! ディルグ:っと、いい太刀筋(たちすじ)してるじゃねーか。 ルフェリア:手加減はせんぞ! ディルグ:そんなことは分かってる、ぜ! ルフェリア:ちっ! ディルグ:こうして剣を振るのは何ヶ月ぶりだ。 ルフェリア:これは戦争だ、そんなものは関係ない!       ……私は別に、お前と過ごした時間を忘れたわけではない。 ディルグ:どうした? そんなものは関係ないんじゃなかったか? ルフェリア:恩を仇で返しているとは重々承知だ。       だが、私はルサーガを、貴様の国を許すことはできん! ディルグ:それは俺も同じだ。 ルフェリア:ならば、なぜ貴様はルサーガ兵としてこの戦いに参戦した!? ディルグ:それしかねーからだよ。      戦況を見れば近いうちにルサーガが滅ぶのは目に見えている。      そうなれば……お前に会うことは難しくなるだろう?      お前は一国の将軍だ、敵国民がおいそれと面会などできねーだろ。 ルフェリア:だからと言って……!       私と会ったからと言ってなんなのだ!       それからどうするつもりだったのだ! ディルグ:……さぁな、それからのことは考えてなかったな。 ルフェリア:貴様……!       ふざけるのもいい加減にしろ! ルサーガ兵士:ディルグ殿! 手助けします! ディルグ:来るな! お前らは前進を続けろ! ルサーガ兵士:しかし……! ディルグ:ここで足止め食らうくらいなら、戦列を前に進めろ!      前列は相手騎兵の突撃で戦列が乱れてるんだ! ルサーガ兵士:わ、分かりました! ルフェリア:ふん、成り上がりが、いい身分だな。 ディルグ:これでも昔は将軍やっていてな。      ちょいとコネ使って即席部隊長はまかせてもらったぜ。 ターグ:ディルグ、何をしている!     貴様も前列へ進め! ルフェリア:貴様、ターグ!?       そうか、そういうことか。 ターグ:ふん、貴様か、女狐(めぎつね)。     いいのか? 貴様の騎兵部隊はもう後退していったぞ。 ルフェリア:ちっ……待っていろ、貴様の息の根は必ずとめる。 ターグ:ふん、できるものならな。 ディルグ:いくぞ、前列に合流して戦列を整える! ターグ:待て! ディルグ、貴様の部隊は待機だ! ディルグ:ああ? ごちゃごちゃうるせぇよ!      自分の好きにやらせてもらうという条件で俺は軍に戻った。      そういう契約だったよな? ターグ:ああ、ほんの少し待機するだけで構わん。     弓兵部隊! あの女将軍に一斉射撃だ! ディルグ:な!? ターグ!? ルサーガ兵士:しかしターグ様、あの周辺にはまだ我が軍が……。 ターグ:構わん、やつはファルムの将軍だ!     後退している今なら無防備の背中に矢は有効だ!     その後すぐに騎兵隊、あの女を追撃しろ!     討ち取った者には褒美をやるぞ! ディルグ:ちっ! くそったれが! ターグ:撃て! ルフェリア:何!? 弓矢だと!?       味方の比率の多いこの場所と状況で一斉射撃など!       何を考えているのだ、あの男は! ディルグ:止まるな! ルフェリア! ルフェリア:えっ……!? ディルグ!? ルサーガ兵士:覚悟しろ! ディルグ:止まるな……っつったろ……! ルフェリア:ディルグ!? ルサーガ兵士:ディ、ディルグ殿!?        なぜ敵をかばうようなまねを……! ディルグ:ここは……敵陣真っ只中なんだぜ……。 ターグ:ちっ! 何をやっている、ディルグ。     まさか味方の兵士に腹を刺されるとはな。     絶好の機だったものを。 ルサーガ兵士:わ、私はディルグ殿ではなく、あの敵国将軍を……! ターグ:ふん、分かっている、さっさとあの女を殺せ。 ルフェリア:……また……貴様か……。       ……おおおおおお!! ターグ:バカな、これ以上一人で突撃とは……。 ルフェリア:貴様だけは許さん! ターグ! ターグ:ちっ、退く!……ぞ……! ルサーガ兵士:ターグ様! ルフェリア:貴様らの軍師は私が討ち取った!       死にたい奴は前へ出ろ! ルサーガ兵士:くっ……! ルフェリア:ふん、腰抜けどもが。       道をあけろ! ディルグ:……おう、お前ら、構わん、前進だ……。 ルフェリア:ディルグ、お前……私をかばって……。 ディルグ:へっ……別にいいだろ……何をしようが、俺の、勝手だ……。      それを条件に、俺は軍に、戻ったんだ……。 ルフェリア:なぜ、このようなまねをした……。       敵国の将軍を助けるなどと……。 ディルグ:敵国の将軍じゃねぇ、俺は、ルフェリアを、守っただけだ……。 ルフェリア:……っ!! ディルグ(俺が世話をしたのはファルム連合国の将軍ルフェリアじゃない。      新しい姉貴のルフェリアだ) ルフェリア:……ディルグっ! ディルグ:ぐうっ……何してんだ……? ルフェリア:見ての通り、馬に乗せてるのよ。       ちょっと揺れるけど、落ちないようにしてね。 ディルグ:……ルフェリア……?      お前が、言ったんじゃねぇか……俺は、敵国の部隊長だぜ……? ルフェリア:……弟を……私が弟を死なせるわけないじゃない。       これで私をお世話してくれた貸しはチャラね。 ディルグ:へっ……さっさととどめを……さしちまったほうが……      面倒じゃないと……思うけどな……。 ルフェリア:……さあ、道をあけろ!       私はファルム連合国カルクラット騎兵団第2連隊将軍ルフェリアだ!       道をあけない者は容赦なく斬る!       命が惜しくない者はかかってこい!