Knight Memory Tale 第四話 日常の終焉 ルフェリア(♀) おとなしい、記憶をなくしている ディルグ(♂) ぶっきらぼう、現実主義 リュティ(♀) 元気でお気楽主義 ターグ(♂) 偉そう、嫌なやつ リュティ:それでさ〜、今日もお姉ちゃんの服を見にいったんだ〜。 ディルグ:お前、また服買いに行ったのかよ。 リュティ:えー、いいじゃないのよ〜。      お姉ちゃんスタイルいいからさ〜、いろんな服着せたくてさ〜。 ディルグ:あのな……ルフェリアはお前の着せ替え人形か。 ルフェリア:ふふふ、でも、リュティって服のセンスあるのよ。       私も気に入る服をたくさん見つけてきてくれるの。 リュティ:でしょでしょ〜?      今度は三人でお兄ちゃんの服見にいこうよ。 ルフェリア:あ、いいわね。 ディルグもおしゃれしなきゃ。 ディルグ:えー、俺はいいよ〜。 リュティ:なーに言ってんのよ、たまには……。 ターグ:失礼する。 ディルグ:あ? なんだ、ターグ、またてめぇか。      おい、リュティ、塩持ってこい。 ターグ:今日はお前を連れに来たのではない。 ディルグ:あぁ? じゃあ何しにきたんだよ。 ターグ:今日は女……お前に用がある。 ルフェリア:え……? 私……ですか? ターグ:そうだ、この女狐(めぎつね)めが。     よくもこんなところにいられるものだな。 リュティ:ちょ、ちょっと! あんたいきなり何言ってんのよ! ターグ:うるさい、黙れ小娘。 リュティ:う……お兄ちゃん〜……。 ディルグ:おい、ルフェリアが何したっていうんだ?      濡れ衣きせるのもいい加減にしろよ。 ターグ:濡れ衣だと? そんな次元の話ではないわ。     しらばっくれても無駄だ、これを見ろ。 ディルグ:なんだ? ……兜(かぶと)? ルフェリア:……この……兜は……っ! ターグ:見覚えがないとは言わせんぞ。     この国章(こくしょう)、分かるだろう。 ディルグ:だから何なんだよ、今戦争をしてるファルム連合国の国章だろ。      それが敵の兜だからって、何の関係があるんだよ。 ターグ:これは先の平野の戦いで部下が拾ったものだ。     この装飾を見てもわかるだろうが、これは将軍クラスの者の兜だ。     ……その戦いでな、敵国に鬼神のごとく剣をふるった女将軍がいた。 ディルグ:あのな、だからそれとルフェリアが何の関係があるんだよ。 ルフェリア:……私……私は……。       ターグ:平野の戦いに私も参戦していた。       その時にみかけたのだ、その女をな。 ディルグ:てめぇの証言なんて信用ならねぇよ。 ルフェリア:……あ……私は……お……思い……出した……。 ディルグ:え?どうした?ルフェリア? リュティ:お、お姉ちゃん、大丈夫?。 ルフェリア:……っ! ……ちっ! ディルグ:お、おい! ルフェリア!? リュティ:きゃあっ! ディルグ:おい……ルフェリア、何してるんだ……? リュティ:お……お姉ちゃん……? ルフェリア:動くな!       動くとこの娘の喉を掻き切るぞ! ターグ:本性をあらわしたな。     ディルグ、これを見てもまだしらばっくれるつもりか? ディルグ:しらばっくれるも何も……ルフェリアは記憶をなくしていた、だけだ……。 ターグ:……そうか、だが、こうなった以上どちらでも構わん。 ルフェリア:お前も動くな、ターグ!       思い出したぞ、貴様……平野の戦いで村に火をつけるように手を回したのは貴様だったな! ターグ:ふん、民家があっては自軍の士気は下がる。     民家を焼き払ったのを敵のしわざのようにしむければ、こちらの士気があがる。     簡単なことだ、私は軍師として当然のことをしたまでだ。 ルフェリア:貴様っ!       ちっ……敵国ながら、考えられんことをやる奴だな……。       待っていろ、すぐにでも貴様の国は滅ぼしてやる。 ディルグ:おい! ルフェリア! リュティ! リュティ:あぐっ……! お兄ちゃん! ルフェリア:……安心しろ、リュティ、お前には世話になった。       傷つけはしない。 リュティ:えっ……? おねえ……ちゃん……? ターグ:ちっ! 待て! ディルグ:どういう……ことだよ……。 ルフェリア……お前……今までのは嘘だったっていうのかよ! リュティ:お……お姉ちゃん……。      本当に……お姉ちゃんは敵……なの? ルフェリア:……ああ。 リュティ:記憶……戻ったんだ……。 ルフェリア:…………ああ。 リュティ:でも……あたし、喜べないよ……。 ルフェリア:……本当に、私は嘘をついていたわけではない……。 リュティ:うん……信じるよ……。 ルフェリア:すまない、リュティ。       ……私はファルム連合国の将軍、ルフェリアだ。       リュティと……ディルグには本当に世話になった、感謝している。 リュティ:そんなこと……ないよ……。 ルフェリア:私のことは……忘れてくれ……。 リュティ:え? ……忘れないよ……短かったけど……お姉ちゃんのこと。      ……ねえ、本当にいっちゃうの? ルフェリア:……ああ。 私はここにいるべき人間ではない。 リュティ:じゃあさ、この国を出て、三人で暮らそうよ! それなら……。 ルフェリア:それもできない。 平野の戦いをくりひろげるような国を、私は許してはおけない。 リュティ:……でも……。 ルフェリア:ここまで来れば大丈夫か……。       本当にすまなかった、リュティ。       ここから歩いては帰れるな? リュティ:……うん……。 ルフェリア:このナイフを預けておく。       もし襲われるようなことがあったら、構わん、これを相手の胸に付きたててやれ。 リュティ:えっ……? ルフェリア:それじゃあ、さよならだ。       ……短い間だったけど……楽しかったよ。 リュティ:あっ……お姉ちゃん……お姉ちゃんーーー!!