とある国家の風景4 〜軍略会議〜 エルミス(♀) クール、根は優しい ソライア(♂) 沈着冷静、礼儀正しい イレス(♂) 嫌味系、偉そう ソライア:それでは、これよりクルド山岳地帯の戦略会議を開始します。      まず、最初の議題はメトール川付近で輸送が停滞している補給部隊についてです。 イレス:このところの豪雨で進軍に大きく影響が出ているからな。     明日には部分的にだけでも前線補給基地に到着しないと、兵士の食事すら配給できるかも怪しいぞ。 エルミス:そこまで補給物資は滞っているのか。      付近の駐屯基地に備蓄はないのか? ソライア:元々、クルド山岳地帯は現在までに目立った戦闘もなく、配備兵士は少ないため備蓄は期待できませんね。 イレス:そもそも、駐屯基地から補給を求めるのが間違いだ。     近辺の村から一時的にとはいえ徴収すればいいのではないか。 エルミス:続いている戦乱で付近の民衆の我が軍に対する評価は冷淡だ、おそらく無理だろう。 イレス:だが、クルド山岳地帯での敗戦は近辺の村はおろか、国境としての一角を失うことになりかねん。     そうなれば付近の村の損害は甚大だ。 エルミス:おい、お前、それは半ば脅迫に近いのではないか? イレス:聞こえによっては脅迫に聞こえるかもしれないな。     だが、戦況は切迫している、不足している補給物資を確保できないことには、その村の住民の安全は保障できない。 ソライア:イレスさんの言うことにも一理ありますね。      ただ、ここは穏便に事を進めていくため交渉は慎重に行ってください。 イレス:それよりもだ、昨夜の敵国の騎兵小部隊による森林からの奇襲についてだが。 エルミス:お前はまたその話を論議するのか。 イレス:当たり前だ、あの夜襲での被害は甚大だ、敵に目をつけられたら繰り返し奇襲を受けるかもしれん。     本件に関しては私は警備の厳重化と交代制の斥候兵の増強を要求する。 ソライア:警備の厳重化については受諾しましょう。      ですが、斥候兵の増強については今回は採用しません。      地理的に山岳地帯であるので、斥候の機動力は生かせません。 エルミス:そうだな、平坦な場所での斥候なら事前に奇襲の気配のある場所への偵察が有効だろうがな。 イレス:ふん、まあいい、警備兵の増員で敵も警戒するだろう。 ソライア:山岳地帯での戦闘なので、大量の兵士数を投入することができません。      人員の配備は必要最低限に留めます。 イレス:後、第二歩兵部隊の左翼配置についてだが……。 エルミス:あー、ちょっといいか? ソライア:なんですか? エルミス:この軍略会議ごっこ、いつまでやるんだ? イレス:気が済むまでだ。 エルミス:はあ? 戦争も起こっていない今、こんなことやっても意味ないだろう。 イレス:剣や槍の腕前のように、たまには頭を使わないと軍師としての能力も落ちてしまうぞ。 エルミス:はぁ……架空の戦略ごっこをやっていてもつまらん。      実際に起こりうるかもしれん戦略を進めるのならまだしも、だ。 ソライア:クルド山岳地帯は温泉地帯で過疎気味な地域ですからね。      この地域の戦略的メリットはほとんどありませんからね。 イレス:ふん、お前らにはこういった例外的な戦略を練ることに重要さは見出せんかったか。     まあいい、失礼する。 エルミス:……はぁ……あいつときたら……毎度のことながらめんどくさい……。 ソライア:まあ、頭の体操ということでいいんじゃないですか。 エルミス:珍しいな、お前が架空のことに興味を持つなんてな。      事実に即したことに最も重きを置くのではなかったか? ソライア:そうですよ。 エルミス:じゃあなんで……って、お前、その紙はなんだ? ソライア:クルド山岳地帯の隣のアルフォード平原への侵略概要案です。 エルミス:まてまて! 戦争起こす気か!? ソライア:後はここに王のサインさえもらえれば……。 エルミス:今すぐ破り捨てろーー!