とある国家の風景1 〜兵士〜 リム(♀) 新人系、なんか熱い子 エルミス(♀) クール、根は優しい リム:あのっ、すみません! エルミス:……ん? 私か? リム:はいっ、あなたです! エルミス:な、何か用か? リム:見たところ、国の兵士さんとお見受けしたのでっ! エルミス:え? まあ……そんなとこだがな。 リム:やっぱり!    お願いします! 私を兵士として雇ってください! エルミス:は……はあ? リム:お願いします!    皿荒いでもお茶出しでも草むしりでもなんでもやりますから! エルミス:い、いや……兵士にそんな仕事はないぞ。 リム:じゃあ、お姉さまの剣の手入れから肩もみまでなんでもやらせていただきますからっ! エルミス:お、お姉さま?      いや、お前、兵士になりたいって奴がそんな雑用してどうするんだ。 リム:私、どうしても兵士になりたいんです! エルミス:ふう……お前のような身なりなら、食堂や酒場ででも雇ってもらえるだろうに。 リム:それが……今までいろんなアルバイトをしてきたんですが、全部クビにされちゃって……。 エルミス:……なにかしでかしたのか? リム:別にそんな……お店のお皿を50枚割ったり、セクハラしてきた酔っ払いの顔面に裏券入れたくらいですよ。 エルミス:あ、あぁ〜……なるほど……。      しかし、なぜ兵士になりたいんだ? リム:私、小さい頃から憧れだったんです!    国のために戦い、戦友との悲しい別れを経て、一人敵地に乗り込む勇敢な王国兵士! エルミス:いや……お前のイメージはなんかズレているぞ……。      というか、お前も今の状況は知っているだろう。      平和すぎて兵士の仕事なんて今はないんだぞ。 リム:そ、それでもいつか訪れる戦乱に備えて訓練をっ! エルミス:といってもなあ……給料は安いし、暇だし、兵士やってもいいことはないぞ。      悪いことは言わん、やめておけ。 リム:嫌です! 兵士王に、私はなる! エルミス:なんだそれは……。 リム:私の兵士への憧れは本気なんです!    お願いします、私を兵士として雇ってください! エルミス:……むぅ〜……はぁ……これも巡り合わせか。      私の負けだよ。      運がよかったな、私は人事にもたずさわっている人間だ。 リム:え? じゃあ……! エルミス:ああ、とりあえず見習いとして雇ってやるよ。      ろくな仕事もしない人間よりは、やる気のある人間の方が頼りになるからな。 リム:やったあ〜! この辺りを通る兵士さんにお願いしまくった甲斐があった〜! エルミス:ぶ! お前、誰かれ構わず声かけていたのか。 リム:はい! 20人ほど!    みんながみんな「他の人にあたってくれ」と言っていましたがっ! エルミス:あぁ〜……なんか雇いたくなくなってきた……。 リム:ありがとうございます!    私、一生懸命頑張りますね! エルミス:あー……はぁ……。      もし戦いになっても、味方を斬るようなマネだけはしないでくれよ。 リム:え? …………あ……は、はいっ! エルミス:そこでためらうな!