とある教室の風景10〜ムツゴロウ〜 ■ 野坂 16歳 ♂ テンション高いおばかさん。 とにかく勢いでもっていこうとする。 ■ あいり 16歳 ♀ 姉御系。上手なツッコミ役。 なにげに沈着冷静。 野坂「なあ、あいり、ムツゴロウって知ってるか?」 あいり「知ってるけど、どっちのムツゴロウ?」 野坂「どっちの?    ムツゴロウはムツゴロウだろ」     あいり「あー、そうね、そのムツゴロウがどうかしたの?」 野坂「あいつら泥の中で生活してんだよな。    なんで水でもない陸でもないとこにいるんだろうな」     あいり「別に、そういう生き物なんじゃないの?」 野坂「それを言ったら元も子もないだろー」 あいり「だってそうじゃない、そこを論議したってどうしようもないでしょ?」 野坂「じゃあさ、ムツゴロウは海と陸のどっちで飼育できるんだ?    っつーか、どうやったら家で飼えるんだ?」     あいり「何よ、結局は自分の家で飼いたいわけね。     無理じゃないの? ムツゴロウ飼ってる人なんて聞いたことないし」      野坂「そこをなんとか!」 あいり「あたしにどうして欲しいわけよ。     それなら、試しに水槽とかで飼ってみればいいじゃない」      野坂「おお、そうだな!    ムツゴロウってどこで売ってるんだ?」 あいり「そもそも、ムツゴロウって九州に生息してるもんでしょ。     さっきの地理の授業で習ったじゃない」      野坂「じゃあ、九州のペットショップとかで売ってるのか?」 あいり「さあ……スーパーじゃない?」 野坂「は? スーパー?」 あいり「ムツゴロウって食べれるらしいわよ」 野坂「えええ!? あいつら食用なのか!?」 あいり「別に食用ってわけじゃないだろうけどね」 野坂「せっかく飼っても、食わなきゃなんねーのか……」 あいり「蒲焼とか美味しいらしいわよ〜」 野坂「か、蒲焼……う、うまそうだな……」 あいり「早くもムツゴロウがペットじゃなくて、食べ物に見えてきたみたいね」 野坂「い、いや、俺は立派なムツゴロウに育ててやるぜ!」 あいり「だから無理だってば」 野坂「それなら俺がムツゴロウ育成の第一人者になってやるぜ!」 あいり「別にあんたが第一人者じゃないと思うけどね」 野坂「よし、それならスーパーに行ってまずはムツゴロウを買ってこないとな!」 あいり「水槽にムツゴロウの蒲焼を浮かべるの?」 野坂「いや……生きてるやつって売ってないのか?」 あいり「少しは自分で探してみなさいよ」 野坂「ならば、野生のムツゴロウを捕獲だ!」 あいり「ムツゴロウは最近、絶滅危惧種に認定されつつあるらしいわよ」 野坂「マジか! それならなおさら!」 あいり「あんた、ホントにさっきの授業何も聞いてなかったのね」 野坂「とにかくだ、俺はムツゴロウを繁殖させてムツゴロウ王国を設立するぜ!」 あいり「無理でしょうね〜、飼育的な意味でも、版権的な意味でも」