とある教室の風景8〜引っ込み思案な心配事〜 ■ しほ 16歳 ♀ 引っ込み思案で、何事にも裏に裏に考えてしまう。 大人しく、口数は少ない。 ■ さゆか 16歳 ♀ ドジっ子。持ち前の明るさで周りを明るくするような子。 ポジティブ人間でよく喋る。 さゆか「あれ〜? どうしたの、しほ」 しほ「えっ? い、いや、なんでもないよ……」 さゆか「またまた〜、あんたが外を眺めながらボーッとしてるのは何かある証拠よ。     さあさあ、あたしに何でも話してくれたまえ〜」 しほ「な、なにもないよ……さゆかちゃんには関係ないことだし……」 さゆか「何言ってんのよ、あたしとしほの仲じゃないっ。     いーから聞かせてよっ」 しほ「う、うーん……」 さゆか「なに〜? しほ、あたしに隠し事?     いーわよ、じゃあ、しほのこの前の神社での出来事、クラスの男子に話しちゃおっかなあ」 しほ「そっ、それはダメー!」 さゆか「じゃあさ、話してみてよっ」 しほ「はぁ……うん……えっとね、さゆかちゃん、4組の田中君って知ってる?」 さゆか「おおー!? しほって田中君のこと好きなのっ!?」 しほ「こ、声が大きいよっ……!」 さゆか「たはは、ごめんごめん。 それで、田中君がどうしたの?」 しほ「その……この前の体育の授業で、たまたま隣に座ってたんだけど……」 さゆか「あらー、いいシチュエーションじゃない。 それからそれから?」 しほ「えっと……田中君が隣にいることは嬉しかったんだけど……。    ……私みたいなのが隣にいていいのかなあ、って思って……」 さゆか「えー? 何言ってんの? 別にいいに決まってるじゃない。     そもそも、体育の授業でたまたま隣に座ってただけよね。     全く問題なっし! 田中君だって嬉しかったに決まってるよっ!」 しほ「いや、でも……田中君、ちっともこっち向いてくれないし……。    この前ちょっと話した時のこと気にしてるのかなあ、って思って……」 さゆか「この前の話? あんた、田中君とどんな話したの?」 しほ「え? いや、社会の授業のことで、歴史の話をしただけだけど……」 さゆか「いやいやいや、なんで歴史の話をちょこっとしただけでそんなに気にしちゃうのよ。     そんなの普通じゃない。 誰でもそんな話はするよ〜」 しほ「その……歴史でも……戦国時代の話をしてて……その……。    戦国時代に興味がある女の子なんて変かなあ、って思って……」 さゆか「えー、別に変なことじゃないよ〜。     戦国時代に出てくる人って、みんなカッコイイ男の人ばっかりじゃん。     女の子が好きになるのは最近じゃ普通だよ〜」 しほ「そうかなあ……でも……その、えっと……」 さゆか「なになに? 言ってみてよ〜」 しほ「さ、最近じゃ……その……び……びーえるとか……」 さゆか「え? 何? BL? どうしたの、しほ、BL好きなの〜?」 しほ「いやっ、違うけど……っ! 声が大きいからっ……!」 さゆか「戦国時代とBLって何か関係があるわけ?」 しほ「いや……戦国大名が好きってことは、その……。    カップリングとか考えてる、ってイメージがついてないかなあ……って思って……」 さゆか「あっはははは、そんなわけないじゃーん!     織田信長×豊臣秀吉、みたいな?     確かに織田信長は攻めっぽいけどね〜、あはは」 しほ「そ、そんなこと私考えてないからっ……!」 さゆか「えー、しほ、どうしたの〜? 顔真っ赤よ〜?」 しほ「と、とにかくっ、田中君が私のことをそんな風に見てないかなあ、って気になっちゃって……」 さゆか「考えすぎだって、どうしてそんなところまで考えちゃうかなあ。     田中君だってそんな話したこと覚えてないって」 しほ「だってぇ……」 さゆか「あれ? ちょうどいいところに田中君だ」 しほ「えっ!?」 さゆか「ちょっと〜、田中くーん、オダ×トヨってありだと思う〜?」 しほ「あー!! やめてー! 違うからああ!!」